If you are …

５.Ｋｉ ページ5

…来るんじゃなかった。
スケジュール、マネに確認すればよかった。


最近、あれこれ考えてたせいでマネの話を曖昧に聞いていた。まさに上の空状態で。
自分の失態に後悔する。


「今日って、まえあし組だけなの？」


マ「あれ、言ってませんでした？(笑)メンバー全員のスケジュール押さえるのちょっと大変で。とりあえずお三方でお願いしました！」


仕事ならまだしも、あいつとの飲み会は避けていたのに。番組スタッフのみなさんと交流会だって時点で気付くべきだった。


遅れてやってきたおれに見慣れないスタッフさんが手を振っている。
無視するわけにもいかないから軽く会釈して、その敷居を跨ぐ。


「…えっと…、」


大「初めまして、先日異動してきたばかりの大石って言います！お会いできて光栄です！」


丁寧な挨拶に、物腰柔らかい青年。
見るからに下っ端、新人って感じの男のコ。


求められた握手に、今度はきちんと頭を下げて挨拶する。


「…北山です、よろしくお願いします。」


大「はい！知ってます(笑)みなさんのこと大好きなんで！」


「はぁ。」


若々しいノリに若干引きつつも、好印象な青年に自然と笑みも溢れる。
当たり障りない挨拶を交わして、握手された手をそのままに、グイグイと引っ張られる。勢い流されるままに、そこそこに盛り上がっている座敷に無理やり腰を落とされる。


大「今日はじゃんじゃん飲んじゃって下さい！！」


「…ども。」


まるで台風。通り過ぎていく出来事に驚いたまま返事すれば、クスクスと笑い声が聞こえる。
見知った笑い方にムッとして、睨み付けるように振り向いた。


「…なんだよ、」


Ｔ「いや、いよいよおじさんだなぁって(笑)」


「うるせぇ。」


Ｔ「大丈夫だよ！見た目はあの子と同等…いや、若く見えるから(笑)」


たまの言葉に少しの悪意を感じ取りながら、半ばヤケクソ気味で目の前の枝豆をつまむ。
黙々と枝豆に夢中になってたら、たまが不思議そうにおれを覗き込んでくる。


「…今度はなに？」


Ｔ「あれ、みつ…この香り、がやとお揃いだね。」


たまのセリフに、掴んだばかりの枝豆がポロッと落ちていく。
その意味深な笑顔にどう反応すればいいのか戸惑いつつ、伸ばした手を引っ込めた。


「…そう、なんだ。たまたまじゃん？」


Ｔ「うん、珍しいよね。みつならこの香り納得。がやにしては甘すぎるなぁって。」


時々、たまの敏感さには驚きを隠せない。

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