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長年染み付いた身体は賢いもので、大体この時間が起床ですよと言われてるみたいにゆっくりと意識が浮上してくる。
ぼんやりと霞む意識の中で、眩しいくらいに照り付けてくる太陽の光。


(そういえば昨日…カーテン、)


締め忘れていた。
それを思い出して、ぼんやりする意識がようやく覚醒する。やっぱり冷え込む朝方に落ちていた毛布を手繰り寄せようと身体を起こす。
そこでタイミングよく鳴るアラーム。
ローテーブルに置きっ放しになっていたスマホに手を伸ばす。


ぽちぽちとスマホをイジりながら、ふわっと掠める匂いに突然、きゅるきゅると腹が鳴る。


「腹へった…、」


のそのそとソファに沈んだ重い身体をあげて、キッチンへと向かう。
いつもの定位置に当たり前のように置かれたそれ。自分には似付かわしくないお洒落な朝食に、藤ヶ谷が居たと言う現実を目の当たりにする。


「……冷めてんじゃん。」


いつ注がれたかわからないコーヒー。注がれたコーヒーに罪はないから眠気覚ましに頂こうとカップを掴む。
コーヒーに混じって香る嫌でも見知った匂い。フワッと絡み付く香りに勢いよく振り向く。


「…藤ヶ谷、」


F「…起きたんだ?」


(つか、まだ居たんだ…)


てっきりとっくの昔に帰ったと思っていた人物。藤ヶ谷がそこにいるという驚きに、それ以上反応出来ずに固まる。
固まったまま振り向くおれの頬に、遠慮なく伸びてくる指先。クッと捕まれて、そのまま唇を奪われる。


「っ…ん、」


濡れた藤ヶ谷の髪の毛が頬に当たって、くすぐったい。ごちゃごちゃなにも考えたくなくて、流されるまま瞼を閉じた。


「ん…ぁ、」


ペロッと唇の端を舐められて、溺れた熱から浮上する。藤ヶ谷のクセ…、キスの終わりはいつも熱い舌がおれの唇を撫でていく。


F「…北山、」


切なげに揺れる瞳。懇願するように藤ヶ谷の唇がおれの名前を呼ぶ。


「…今日、これから仕事、」


F「わかってる。ね、少しだけ。」


好きなやつから求められて、拒否できるやつなんているんだろうか。いつ、誰と、どこでなにしてたって、こうやって求められてしまえば、おれから突き放すことなんて出来ない。


許可なんてひとつもしていないのに、肯定と受け取って優しくおれの手を引く。
さっきまで身を寄せていたそれにギシっと小さく音を立てて沈む。


(あ…、おれと同じ匂い)


昨日あれだけ掻き乱された香りが、同じ香りってだけで小さくおれの胸が疼いた。


(おれってば、単純…)

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蜜柑(プロフ) - 絢音さん» 絢音さーんヽ(^◇^*)/ ワーイコメントとっても嬉しいですーありがとうございます!!どうにかこうにかカタチにしましたが大丈夫でしょうか…オマケは私の欲望満たすために書きました笑 (2019年10月4日 21時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - 蜜柑さん♪完結おめでとうございます!両想いのはずなのに拗らせ輔ちゃんが暴走しまくっていてハラハラしましたが、ようやくお互いの気持ちが分かった時はホッとしました!オマケのみったん…最高です(〃ω〃)ありがとうございました♪ (2019年10月4日 6時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - まりさん» こんにちは!コメントありがとうございます(T ^ T)とっても嬉しいです〜〜是非また遊びにいらして下さいませヽ(^◇^*)/ ワーイこれからもよろしくです♪ (2019年10月3日 11時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - 藤北ラブさん» こんにちは(*^^*)こちらこそ最後まで読んで頂き感謝です!楽しんで頂けたなら嬉しいです!ありがとうございましたヽ(^◇^*)/ ワーイ是非またいらして下さいませ☆ (2019年10月3日 11時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - 蜜柑さん。こんばんは!毎回更新楽しみにしてました!藤ヶ谷さんの狂ってる愛情も最後のみっくんの可愛さも最高でした!素敵なお話ありがとうございます!またお話楽しみにしています! (2019年10月2日 22時) (レス) id: 9c7317f745 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蜜柑 | 作成日時:2019年5月29日 18時

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