11.Ki ページ11
今の話、聞かれた?
いや、いつからいた?
気付いた時には…そこにいた。
ドクドクと忙しなく打ち付ける心臓。
このまま死んじゃうんじゃないかってくらい激しく攻め立てる音に、ギュッと胸が詰まる。
大「藤ヶ谷さんっ!」
大石の嬉しそうな声音に余計に動けなくなる。背後から徐々に強くなる香りにぎゅーっと瞼を閉じて立ち竦む。
藤ヶ谷が歩くたびに締め付けるような香りに襲われて、スッと横から通り抜けたのを確認してジリジリと後退する。
そこから逃げるように踵を返す。
瞬間、パシッと掴まれた腕に俯いていた顔が驚きとともに上がる。
F「学くん。今日はごめんね。」
大「え?」
F「今日はとっても大切な用事があって。」
大「大切な…用事…、」
おれの手を掴みながらやり取りされる会話に、やっぱりそうなんだと改めて確認する。
(…二人はお互いの家を何度も行き来する関係…)
ぼんやりと浮かんだ思考に瞼が熱くなってくる。
わかっていたはずなのに、いざ突き付けられた現実に泣くなって方が無理だ。
無理やり会話を切り上げて、淋しげに去っていく大石の背中を盗み見る。
まるでさっきのおれみたいな、そんな背中だ。
掴んだまま離れていかない藤ヶ谷の手。
振り払う勇気なんてなくて、トボトボとそのまま着いて歩く。
すれ違うスタッフさんたちの物珍しい目付き。
流石に気になって、掴まれた腕に力を入れて少し引いてみる。
それでも頑なに離してくれなくて。
一体なんだってんだ…、
テキパキとそれなりのペースからだんだんと緩くなる歩幅。やっと聞き耳立ててくれそうと踏んで、小さくその名を呼ぶ。
「…あの、藤ヶ谷…、」
呼んだ名前に、ピクッと反応する藤ヶ谷。それでも立ち止まる気配も振り向いて伺う行為も、何にも感じない。
無言で、時々歩を緩めながらおれの手を引いて歩く。
だんだんと他人の気配が遠退いて、空室と掲げられた楽屋らしき部屋まで辿り着いて。
F「…入って。」
そこで初めて口を開いた藤ヶ谷。
なんの感情も読み取れない言葉で、おれの手を引いたまま促してくる。
促すままにそっと侵入する。続けて無言で侵入してくる藤ヶ谷の気配。
後ろ手にカチッと掛かるその音にじんわりと緊張感が襲う。
振り向けないまま、俯く顔。
ただひたすらに自分の足を見つめていたら、背後で香るその匂い。
キュッと背中から回る腕に、纏わりつく藤ヶ谷の存在感。
遠慮なく掴まれた身体。背中から体温ごと奪われる。
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蜜柑(プロフ) - 絢音さん» 絢音さーんヽ(^◇^*)/ ワーイコメントとっても嬉しいですーありがとうございます!!どうにかこうにかカタチにしましたが大丈夫でしょうか…オマケは私の欲望満たすために書きました笑 (2019年10月4日 21時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - 蜜柑さん♪完結おめでとうございます!両想いのはずなのに拗らせ輔ちゃんが暴走しまくっていてハラハラしましたが、ようやくお互いの気持ちが分かった時はホッとしました!オマケのみったん…最高です(〃ω〃)ありがとうございました♪ (2019年10月4日 6時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - まりさん» こんにちは!コメントありがとうございます(T ^ T)とっても嬉しいです〜〜是非また遊びにいらして下さいませヽ(^◇^*)/ ワーイこれからもよろしくです♪ (2019年10月3日 11時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - 藤北ラブさん» こんにちは(*^^*)こちらこそ最後まで読んで頂き感謝です!楽しんで頂けたなら嬉しいです!ありがとうございましたヽ(^◇^*)/ ワーイ是非またいらして下さいませ☆ (2019年10月3日 11時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - 蜜柑さん。こんばんは!毎回更新楽しみにしてました!藤ヶ谷さんの狂ってる愛情も最後のみっくんの可愛さも最高でした!素敵なお話ありがとうございます!またお話楽しみにしています! (2019年10月2日 22時) (レス) id: 9c7317f745 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2019年5月29日 18時