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9.T ページ9

こんな感じで言うとか本当残念すぎる。
焦っているんだろうか…、
思いの外、近くなっていくみつとがやの距離に。


吐き出してしまった言葉は止まらない。止めようがない。


みつの髪の毛をくしゃりと潰しながら、


「…わかってるんでしょ?みつは、そんな鈍感じゃないよね?」


自分の気持ちを受け止めてほしい一心でみつにぶつける。みつらしくない戸惑いを露わにして、俺に向けられていた視線がスッと離れていく。


Ki「…っ、」


何か言いたそうで言えない、そんな風に何回も口をつぐむ。
カウンターに預けていた姿勢を正して、改めてみつに向き直る。


「…おれのことだけ見て。おれのことだけ考えて。」


Ki「…たまちゃん、おれ…、」


「まだ何にも始まってないよ?…それとも…おれじゃダメな理由、ある?」


困ったように俯くみつに漬け込んで、追い打ちをかけるように矢継ぎ早に告げる。黙ったままキュッとみつの手が拳を握る。


短く…でも長い沈黙。
それに耐えきれずに、


「…なーんてね。そろそろお開きにする?明日も早いし。」


このまま拒否されたら俺の身が持たない。そんな一心でみつが発言する前にそうやって誤魔化した。


ただの弱虫。ヘタレ。
…みつに拒否されるのだけは耐えられない。心のどこかで俺は…みつは、俺を受け入れてはくれない。そんな予感がした。
だから、何もなかったみたいにその場から立ち上がる。


Ki「っ、たま、待って。」


「今日は俺のおごりー。いつもみつが払ってくれるから(笑)」


みつが伸ばした腕をさり気なく払い、乱雑に置かれた伝票を片手に席を外す。
呆然と固まるみつを放置して背中を向ける。その瞬間、後ろから苦しそうな吐息が聞こえた気がした。


俺はずるい。でも…俺だってみつが好き。
…これでやっとがやと同じスタートラインだ。
がやにするみたいにおれをもっと…もっと意識すればいい。


みつは…気付かないフリをしているだけ。
でもいつも見てるからわかるよ。


みつの中には、ずっとがやがいる。
決して、言葉に…態度に出そうとしないけれど、ここ最近のみつの様子は、俺の心を刺激するには充分なほど嫉妬心をくすぐる。


みつとがやの中には簡単には入れない。
二人の間に流れる甘い雰囲気は、どこか特別だ。
だけど…それはもう覚悟の上だ。


だから、思う存分みつに気持ちをぶつけてやるよ。
がやには…絶対渡さない。
このチャンス…逃してなるものか。

覚悟しろよ、二人とも‼

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作者名:蜜柑 | 作成日時:2017年7月19日 22時

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