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7.F ページ7

二人きりの楽屋に甘く静かな雰囲気が広がる。
心地いい空間に、スッと空気が変わったみたいにピロリンと鳴り響く場違いな通知音。
それにハッと思い出したかのように北山がピクリと反応する。

何となくムッとする俺。
こうゆう時のいやーな感じは意外と当たるもので。


「…たま?」


Ki「…ぅえ⁈」


俺の言葉にYESとでも言うかのように、大人しく俺に抱きしめられていた北山が大袈裟に仰け反る。
そのせいで簡単に離れていく北山。


ついさっきまで俺の腕の中にいたのに、ポリポリと嬉しそうにホッペを掻き、


Ki「多分たまちゃんかな。この後、メシ行く約束してたから。」


へへ、なんて笑い声を漏らしながら置きっ放しになっていたスマホに手を伸ばしてそう言う。

ただそう見えるだけかもしれないのに、たまとメシ。そう言う北山は、俺といる時より全然楽しそうで、たったそれだけなのに、今この時の気持ちが、簡単に冷めていく。


「じゃあ、たまによろしく。」


Ki「え…っ、」


「また明日ね。」


ひらひらと手を振って出て行こうとする俺に慌てて北山が振り向く。
振り向いた北山と俺が出て行くタイミング。すれ違うようにそこから抜けて、扉が閉まると同時に、深くため息を吐いた。


「…たまかぁ…、本当、このままじゃダメだな。」


ズルズルと扉にもたれ掛かれながら地面へと沈む。このまま自分の気持ちに流されて、開放されていいのだろうか…そうやって思いつつ心のどっかで、だったらたまのことは?北山と向き合うならたまとも向き合わなければならない。
そんな答えに辿り着かない葛藤を繰り返す。


コツンと扉に身を預けて、楽屋から聞こえてくる楽しそうな話し声にまたため息が溢れた。


俺とは絶対そんな楽しそうな電話はしない。仕事のこととか連絡事項とか…プライベートでは一切鳴らない自分の虚しいスマホを力一杯睨み付けた。


明日は衣装合わせ。こうやって北山と一緒にいられるのも後数日だ。限られた時間で、俺は何をすればいい?
簡単にこじ開けられた俺の気持ちは些細なことで見え隠れして、もうこれ以上前みたいに上手く隠せる自信も余裕もない。


小さく息をすれば、自身に残る落ち着かない香りに、さっきの北山を思い出す。逃さないように身を縮こまらせて自身をぎゅっと抱きしめた。


もっと欲しい…、


思い、自身の身体に顔を埋める。


きたやま、俺…お前に好きって言ってもいい?
それでもっと…もっとキミをぎゅっと抱きしめたい。

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作者名:蜜柑 | 作成日時:2017年7月19日 22時

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