5.F ページ5
柄にもなくたまと張り合う自分。
以前よりもさらに仲睦まじく見える二人に嫉妬して、どうにもこうにも自分の気持ちから目を背けている場合じゃない。
たまの本気がより一層ヒシヒシと感じる。
余裕なんてあるわけない。
北山との関係なんてどう見てもたまの方が近い。
何とか終えた撮影は嬉しそうに寄り添うたまを邪魔しただけだった。
「…終わった…。」
特に何もせずに。
アクションなんてこれっぽっちも起こさずに。
いつも通りに終わった。
どうにもできないやるせない気持ちに振り回されながら不甲斐ない自分を思い出す。
だらりとソファに身を預け、ぼんやりと天井を見つめる。
北山は…この仕事について何を思っただろう。
世間体ではきっと俺とたまが仲睦まじくて…北山はひとりぼっちで…そんな声声が飛び交いそうで。
閉じた瞼の上から急に覆い被さるように暗くなる。
不意に陰る頭上に不審に思いつつこそっと目を開ければ、心配そうに俺を覗き込む北山の姿。
Ki「…また考えてる。」
「…何が?」
Ki「難しい顔してる。」
そう言う北山こそ難しく何とも言えない表情。
いつにない至近距離に舞い上がる自分が、いつもの自分じゃないようで怖い。
好きの感情は恐ろしく自身を支配していく。
覗き込む北山の頬に触れようとすれば見計らったかのようにクンと少し退がる。
何だろう…やっぱり避けられてるんだろうか。
「たまばっかりズルイ。」
Ki「…はぁ?」
「もっと俺も構ってほしいなぁ…なんて。」
Ki「……、」
溢れた本音に北山の眉間が小難しく寄る。余計に何を言ってんのかわかんない。そんな顔をして。
…そうですよね、キャラじゃないですよね。
「…何でもないですよ(苦笑)」
笑って誤魔化しながら北山から視線を外す。もたれ掛かっていたソファから身体を起こしてそそくさと帰り自宅を始める。
何の言葉も発しない北山を背中に感じながら、ぼんやりと明日の仕事を確認する。
Ki「…構ってますよ?」
「…え?」
確かにいや、はっきりと構っていると聞こえたような…
空耳…妄想…そんな疑り深い思考を繰り返して、こそっと振り向いたら、ぷうっと頬を膨らませて俺をジッと見つめてくる。
Ki「ちゃんと藤ヶ谷と絡んでるじゃん、これでも。例え一夜限りの限定ユニットでも、コミュニケーションは大事でしょ?」
わざとなのか?え?
どうしてそうあざといんだ、君は。
お陰様できゅんとしてしまったじゃないか。
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2017年7月19日 22時