１５.Ｋｉ ページ15
暑い。
痛い。
…苦しい。
ジリジリと数ミリ単位で無意識に揺れる身体。
好きで揺れているわけじゃない、決して。
…何で？
何なんだ、一体。
藤ヶ谷と落ち着かない妙な雰囲気の次は…、
これ…？
「っ、マジいい加減にしろよ！こらぁっ、(泣)」
おれの身体を揉みくちゃにしやがって…っ、
Ｔ「みつ？」
Ｆ「…北山？」
訳がわからない感情がおれを押し寄せてくる。
泣きたくないのに涙なんか出てきちゃって。
「…こないだから…この間から！！何なんだよっ、好きとか…キスとか…もうおれ、いっぱいいっぱいなんだよっ(泣)」
30過ぎたおっさんが子供みたいに泣きじゃくる始末。
その様子に気まずそうに離れていく二人。
やっと開放された安堵感と損失感。
同時に見舞われる変な感覚を覚えながら、キッと二人を睨みつける。
「…頼むから本番終わるまでおれに近付くな。」
放った言葉に二人が固まる。
「必要な時はちゃんと絡みに行ってやるから、余計な感情押し付けんな。」
こうでも言わなきゃ…
こうでもしなきゃ…二人に振り回されっぱなしな上、遠い過去に置いてきた筈の余計な感情がチラついてくる。
しっかりしろ、仕事だろ。
なに、好きだ腫れたで盛り上がってんだおれ。
なに…キスされて浮かれてんだおれ。
もう捨てた筈だろ、アイツへの感情は。
ジッと二人を睨みつけたまま、深く暗い底へと押し込める。
「藤ヶ谷も…たまも、『まえあし』デビューよろしく。」
押し込めた感情にきっちり蓋をする。
切り替えるように揺らがないように振り回されないように、貼り付ける笑顔。
さぁ、本番は3日後だ。
舞祭組に
ファンのみんなに、
おれたちの全力、見せ付ける。
だからそれまでは。
それまでは…たまには応えられない。
藤ヶ谷には…告げられない。
そして続く、俺たちそれぞれのVersuS.
end.
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作者名：蜜柑
| 作成日時：2017年7月19日 22時
