11.F ページ11
まるでどの瞬間も渡さない。
そんな勢いで衣装合わせにしろダンス練習にしろ、打ち合わせにしろ…北山のそばを離れないたま。
今までにない、おれに対する威圧感と対抗心に怖気付く自分。
節々に垣間見えるたまの本気に何も出来ない。
時々気まずそうにこっちを見る北山がひどく憎たらしい。
何なんだ…
そんな顔しておれを見るな。
そう叫んでしまいたい。
重なる視線に耐え切れずフッと視線を逸らす。
その度に少し寂しそうに映る北山の姿はきっと気のせいだ。
「…ムカつく。」
北山の態度もたまの笑顔も。
…何もしようとしない…できない自分も。
まとまりない思考に振り回されながら数日後に控えた生放送に備えて、必死に振り付けを叩き込む。向かい合わせの鏡にチラチラ映り込む二人の姿。
解決しないモヤモヤも気持ち悪いのに、トドメを刺すかのように俺の視界に入り込んでくるそれ。
思わず首にかかるタオルをバサリと頭から羽織る。
落ち着かない胸のざわざわを無理やり沈めるみたいに深く息を吐き出す。
どうにか平常心を保ってきたところで、不意にツンと後ろから引っ張る感覚。被ったタオルがスルッと落ちていく。
「…え?」
Ki「…俺と合わせて。」
俺のタオルを掴んだまま離さない北山。
うつ伏せ加減でポツッと呟いて言う。
流れる沈黙。
キュッと捕まれるタオルが羨ましい。
「…たまは?」
俺のタオルをイジイジしながら、
Ki「…ドラマあるから…先に上がった。」
俯いたまま続ける。
こんな状態でも俺とは中々絡んでこない視線。
募るイライラとともに襲われる不安感。もうこれ以上我慢できずに掴まれたタオルごと、北山の腕を引く。
Ki「…っ、」
「…不愉快。」
言った言葉にあからさまに不安げに瞳を揺らす北山。さすがに俺を見ない北山が戸惑いながらに俺を見上げる。
「…これ見よがしにこっちばっか気にしてさ。…おれにどうしろって?」
Ki「はぁ⁈」
不安そうな瞳から一転、訳がわからない、そう言わんとする表情を浮かべて俺の思考を読み取ろうとグッと近付いてくる。
…不意打ち。
は、やめてくれ。
思わず、カクンと崩れる足元。
掴んだままの北山の腕ごと一緒に倒れ込む。
Ki「わっ、」
「……、」
こんな小説みたいな展開ありえない。
頭の中ではそんなことを考えつつも俺の両腕は倒れこんで来た北山を抱いたまま離さない。
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2017年7月19日 22時