Phantom of the Office

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Side Tamamori




「総務課長吉田孝行(34) 賄賂
全社員のメールアドレスにその証拠を送信せよ」






入社式から３ヶ月。





俺の仕事はいつもは通常業務、


それにプラス月1くらいで家に郵便で届く司令に従う特別業務だった。






まだ3ヶ月目で、だからまだ３回しかこの仕事はしてないけど、





「……正直けっこーツラい」






いや、ほんとにやることは簡単。


ちゃちゃっと調べて証拠テキトーに集めて指定されたところに送るだけだから。






だけど、まぁ普通に罪悪感？



不幸にも前回の司令の標的になってしまった人を思い出す。






その人は普通のおっさん。


でも会社の経費をかなりの額使い込んでた。





それを俺はその人の直属の上司に匿名で伝えた。






当然、その人はもうめちゃくちゃバッシングを社内から食らった。


信頼も失った。地位もなくなった。






発覚してから半月くらいは出社してたけど、


どんどんどんどん顔が土気色になって、


頬がこけていった。






そしたら最後、


鬱になっちゃったんだ。






当然、俺のせいじゃないよ。



使い込みしたのが悪い。それは分かってる。







だけど俺が言わなかったら、


その人は今も普通に生きていられたのかも。





……家族だっていたのかも。



その家族が、昔の俺の家族みたいになるんだと思うと辛い。







別にその人がちょっとくらいお金使い込んだからって会社は倒産しない。







……でもその人が壊れたら彼の家族は壊れちゃうかもしれないのに。




それを俺は身をもって知ってるはずなのに。








……ため息が出ちゃうよね。ホント。








「どうしたの玉。ため息」



「ん？あー、宮田。なんでもない」



「はい、コーヒー」



「お、気が利くじゃん珍しく」



「珍しくって何だよ」







でもそんな俺にも一応同僚、いや友達ができた。


それがこの宮田俊哉。





鼻がでかくって、優柔不断で、


アニメが大好きな変わったやつ。







でも毎日顔を合わせたから仲良くなれたし、


何より宮田は自然体だった。






人に媚びないし、普通に一生懸命働いてるし、


アニメとか好きでも全然隠さない。







なんか、


汚れた俺とは違うなぁ、なんて。






思っちゃうよね。

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