Phantom of the Office

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Side Kitayama






……ずっと、不本意だった。






そこそこチャラく生きてきた。


女に困ることもなかったし、


欲しいものは自分の力で全部手に入れた。






だけどあの時、俺の歳上の彼女があの会社に陥れられたんだ。


俺が始めて結婚したいと思った女。






彼女はあの会社の社長の遠い親戚だかで、


俺があいつと結婚すれば俺が次期社長になることは確実だった。







まあ俺の欲しいものは金？女？地位？


一番ラクして一番いい物が手に入る方法？


みたいな？






俺があの女と結婚すればその全部が手に入ることが確実だった。






なのに、去年あいつはバカみてえな端金のトラブルを起こしやがったんだ。


会社の金をいくらか使い込んだんだと。






「ちがうの！宏光！私じゃない！」






そう泣き叫ぶあの女の顔は相当ヤバかったな。


俺のことが好きで好きでたまらないんだろうな、きっと。






でも俺にとって問題なのは、


あの女が盗ったのか盗ってないのかじゃねえ。






実際金使い込んでても、バレてなけりゃ俺にとってはどうでもいい。







ただ、問題起こさず、そのままの地位をキープして、


俺に金と地位を寄越しておけばよかったのによ。






まあいい。


俺は自分で欲しいものは自分で手に入れる。


そのためには動くしかねえ。






そう思って俺はあの会社のことを調べた。


行き着いた裏サイトには、ファントム業務とか言うダッセェ名前の仕事があるとか書いてあった。






「……使えるわあ、これ」






このファントムになれば、


俺はあの女の地位を回復できる、確実に。





問題を起こした後も、俺は何食わぬ顔で彼女と付き合っていた。


だから彼女の家族からも評判はいい。


結婚まではあと一押しだ。






だから就職面接を受けたのに、


隣の席の奴は「有言実行」


俺は「不言実行」



……言ってる事が真逆かよ。






あいつもP業務を狙ってることは、言葉の端々から伺えた。


だから会社側もP業務として採用するのは、


俺かあの男の二択だったはずだ。







選ばれたのは、


あの白くて優しそうな奴。






ただ俺も採用試験に受かった。


だからずっとあの玉森を観察してた。






だがなんだ？アレは。


ふにょふにょふにょふにょしやがってよ。


いつも玉森と一緒にいる宮田って奴もあいつの業務を邪魔してやがる。








……そろそろ俺が恐喝するしかねえ。

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