Phantom of the Office

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Side Tamamori





宮田が何を言いかけてるかなんかすぐ分かった。






その据わった目が、


緊張して握りしめてる拳が、


意識することなくその先を俺に告げた。






俺はその先を聞きたかった。


宮田とのしあわせな未来が見たかった。






だから続きを聞きたかったよ。でも。







「……ごめん、帰るね」


「え、」







……俺が、本当に宮田のことを想うなら。


彼を幸せにすることが愛だとしたら。






それを遮ることでしか、


俺は宮田を愛せないんだ。







自然に涙が溢れた。



ぼやけた視界に宮田が映って、


それを映した雫が俺の頬をつたう。





涙が溢れて一瞬だけクリアになった俺の目が、


悲しげな顔をした、俺のことを心から愛してくれてる人を見つめる。






そんな顔しないでよ。


いつもの俺のニコニコプルシェンコはどこ。




そんなこと言う権利も、もう俺にはないんだ。






……耐えきれなくなって、


宮田の部屋を足早に出るしかなかった。







この何ヶ月かで、何十回も来たこの部屋。


酔っ払って吐きかけそうになったこのドア。


宮田と俺が一緒に入るためだけにあったのに。








泣きながら、何度も何度も振り返る。


宮田が出てきてくれるんじゃないかって。






今ならまだ引き止めてくれるかもって、


バカみたいな妄想しながら、


でもできる限りゆっくりゆっくり歩く。







「……ふふ、そうだよね。来ないよね…っ」


「………うっ……みや……みやた……」







あんなに勇気を出してくれたのに。


宮田は別に自分をゲイだと思ってた訳じゃない。


男同士の普通じゃない恋愛になるって、


あいつも分かってたはずなのに。






俺はゲイだから最初から平気なのに。


本当なら俺が、言うはずだったのに。






「ごめ……ん……」






なのに、俺が、拒否したんだ。






もう宮田は追いかけて来ない。


もう宮田の住んでる地域すら出ちゃった。







悲しくて、まだ熱がある体が辛くて、


駅の誰もいない角に座り込んだ。







「ねえ」







唐突に上から聞こえた声。







……だれ…？


みやた……？

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