Phantom of the Office

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Side Tamamori





……ぼんやりした白い天井。


そこにガチャガチャした色合いの変なポスターが見える。




ピンクやら黄色やらの髪の女の子たちが俺に笑いかけて……





「……ん？ラ〇ライブ？」


「あ、玉」





よく知った声が後ろから聞こえたと思ったら、俺の視界に宮田がさっと入ってきた。





「おはよう、起きれる？」


「…みや、た？なんで？宮田の家？」





……マジ、訳わかんねぇ。


俺さっきまで仕事してなかったっけ。


坂本さんの書類書き換えようとしてなかったっけ。





「あっっっ！俺！仕事！！」





ガバッと起き上がった拍子に、おデコに乗ってたらしい濡れタオルが落ちた。





「いいの玉は今日休み！」


「は、なんでだよ」


「覚えてないの？玉一昨日帰りたいって言い出したと思ったら高熱出してたんだよ」





……おとといだと？


急いで宮田の携帯を奪って日付を確認する。





「待って、10月4日!?」


「そうだよ」


「っやばい、俺、書類、」





ファントムの仕事はどうなってる？


自分の携帯を確認すると、未読の司令のメールが山のように届いていた。





「うわ、どうしよう……」


「仕事なんかいいよ、具合はどう？俺ほんっっとに心配した……」





……きっとずっと看病してくれてたんだな。




部屋を見渡すともう看病グッズでいっぱいだし、


加湿器やらなんやらも揃ってる。




何より宮田はあんまり寝てないみたいだし、


…悪いことしちゃったな……





「大丈夫。ありがとう」


「マジ？よかったー……会社にはとりあえず昨日から連絡しといたから。今日は休んで」


「……わかった」





目尻を下げて優しく笑った宮田。




俺のことを心から心配してくれてるのが、手に取るようになんか分かる。





それは声のトーンから。


その表情から。


雰囲気から。





「……俺思ってたけど、玉は最近頑張りすぎ。そんなに頑張らなくてもいいよ」





……そしてその言葉から。





宮田が体を起こした俺の背中を、隣に座って優しくさすってくれる。





……こんなのいつぶりだろう。


母さんは、あの時からそんなこと絶対にしてくれなくなった。







「……ありが、と……っ」







ファントムの仕事で、


俺の心は相当強ばってたみたいだ。






宮田の声と背中で感じる手の暖かさが、


俺の心の黒い塊を溶かしていく。






溶けた何かは、


涙になって溢れて止まらなくなった。

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