Phantom of the Office

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Side Tamamori





「あ、たま…」


「ごめん宮田、あとで」


「えっあっ、うん、」





宮田の悲しそうな顔を見たくなくて、前を足早に通り過ぎた。


……あの日から俺は目が回るほど忙しい。





治るのに時間がかかると思ってた足の裏の傷は、忙しく過ごしているうちに気づいたら治ってた。





今は会社も繁忙期に入ったし、ファントムの仕事ももう異常に増えてる。


俺の任務は犯罪スレスレ、いや、もう犯罪。





人の書類を捏造したり、盗聴したり、


毎日毎日最悪なことを平気な顔をしてやらなきゃいけない。






……でももう俺は人として最低な奴に成り下がってしまったんだと思う。







なぜか、妙な満足感があるんだ。





ファントムの仕事してると、人を陥れたりすることで、罪悪感で毎日押し潰されそうになる。





それは本当に苦しい。


……でも苦しめば苦しむだけ、俺は解放されていくから。




解放されていく、はずだから。






そう思って、大きすぎる罪悪感の中に、ちっちゃな満足感を見出してる自分がいる。






自分のためだけにこんなことして、


……最低だって分かってる。







でも、



俺は父さんと同じ苦しみを味わえば、罪を償うことになるはずだから。







……母さんにもユウトにも、俺が父さんと同じ仕事始めたことは報告してある。


2人とも全然反応してくれなかったけど、


でもきっと。





俺がもっともっと苦しめば、


父さんみたいに追い詰められれば。





きっと許してくれる。


そしたらきっと俺も自分を許せるようになる。







それまで俺は頑張るんだ。







……宮田がそれまで待ってくれるのかどうかはわかんない。






でももし、


俺がちゃんとユウトのことも母さんのこともなんとかできたら、


その時宮田が今と同じような感じで俺のそばにいてくれるんだったら。








この気持ちを伝えたいんだ。








好きだよって。




宮田が1番だよって。







.









……俺のこと好きになってって。

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