Phantom of the Office

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Side Tamamori





……夢を見ている。


俺が16歳だったある日の夜の夢。





夢だって分かるのは、


もう何回も同じシーンを見ているから。





「やめっ、やめなさいユウト！」




母さんが体中傷だらけになって俺の方を振り向いた。


俺はそれまでただ信じられなくてずっと立って見てただけだった。





「……ユウト！殴るのは母さんじゃない、俺だろ！」




やっと出た言葉も、激昂したユウトには聞こえた筈もなくて。




俺の目の前で、


父さんが一生懸命作ったテーブルや椅子がどんどん壊されていった。




家族で一緒に作った棚もラックも、すぐにただの破片になった。





「ユウト…!?この棚は俺達と父さんで作ったものなんだぞ！やめろ！」





父さんが死んで1年。


俺と母さんは次第に父さんのいない生活に慣れていった。




でも俺の弟は、父親がいないことでいじめられてグレて、


家で暴れるようになった。





4個下のユウトはまだ中学生で、俺は高校生で、ユウトがいじめられてることも全く知らなかった。





でもそのユウトの怒りや悲しみは突然爆発して、


その日俺達の家族は、


インテリアが大好きだった父さんが作った家具と一緒に、全部壊れたんだ。






「ユウト、やめろ、父さんのことを恨むのはやめろ！」





喉が張り裂けるかと思うほどの大声を出したけど、

結局ユウトには届かなかった。





……俺は、死んだ父さんが大好きだった。


父さんが作る家具も、一緒に作る時間も。





ユウトは小さかったから分からなかったんだろうけど、


父さんは俺達のことを大切に大切に思ってくれてた。





ユウトが言うように、


父さんは俺達を捨てた訳じゃないんだ。





……父さんが首を吊ったのは、


吊るしかなかったのは。





父さんをファントムにした会社のせいだ。


そう思いたかった。






……でも本当は、本当は違うって、


自分でも分かってた。








……思えばあの時だ。


俺もファントムになろうと思ったのは。






……あの夜から、全てが変わった。



俺は大学に行くためにバイトと勉強をひたすらした。


ユウトはそのまま道をそれて、家で毎日のように母さんと俺を殴った。


母さんは毎日泣くだけだった。






そして俺は、あの時から自分の部屋に一切の家具が置けなくなった。





俺と、家族との距離ももう取り返しがつかないくらい離れていった。


家族は俺を犯罪者のように見るようになった。

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