Phantom of the Office

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Side Miyata






パタンとしまった扉の向こうで玉が泣いているのが聞こえた。



そのままゆっくりゆっくり離れていく泣き声。








……全然、意味がよくわかんないよ。








なんで最後まで言わせてくれなかったの？


玉は俺のことが好きだと思ってたのはただの間違いだったの？






……そんなことないよね。


玉は、俺のこと好きだよね。わかってる。






でもそれじゃ疑問が残るんだ。







お互いに好きなのに、愛してるのに、






俺には玉との幸せな未来が見えてたのに、


玉の中にその選択はなかったってこと？






「……そんなぁ……」






部屋を見回すとたくさんのポスターやフィギュアがこっちを向いてる。


抱き枕だってある。







「……アニメはいいよなぁ…」







ホント、アニメって最高。


だって誰も俺の事振ったり嫌いになったりしないもん。






……でもそれでいいのかなぁ、俺。








「………」







良いワケない。


良いワケないよ。





アニメの女の子より、大好きなフィギュアより声優より、誰よりも何よりも。






……好きなのは玉だから。








「…っし！」








玉を追いかけることに決めた俺は、


普段鍛えてなかったことを恨みながら駅まで走った。







でも運悪く駅前のところで信号に引っかかって。



その信号の先の駅のホームで、玉が座り込んでるのが小さく見えた。








「たま！たま！たま！！！」






力の限り叫んだけど、距離と車と信号がその声を阻む。


待ちきれなくて、信号を無視して走り始めようとしたその時、


玉に近付く北山が見えた。







部署が違うからよく知らない同期。


その北山が玉に近づいて、


頭を撫でるのが見えた。








「え……」








力なく呆然と立ってた俺は、


玉がそのまま北山の背中に乗って運ばれて行くのを見過ごすしかなかった。







……北山のあの目。







愛おしそうな振りして玉を見ながら、


でも狡猾でずるそうなあの目。









なんとなく悪い予感がしてゾッとしたけど、俺にはもう何もできなかった。

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