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………

「赤い丘でまってるわ」


この言葉が、宏光の耳の中でとめどなくなっていた。


それは、女の声だった。


宏光は走るのをやめない。


心臓が破裂してしまいそうだが


凍った夜の中を駆け抜けた。


雪の草原を駆け抜け、北風に逆らい


林を抜け、体が千切れそうな沼も抜け


月のない暗闇をひたすら


ただひたすら走ったのだ。


これで、宏光は逃亡兵になった。


隣国との戦いの最前線から逃げ出したのだから。


「裏切者」「臆病者」という汚名を覚悟で。


味方に捕まり、軍法会議にかけられれば


死刑だと知りながら。


「もう失うものなどなにもない」


この言葉が、泥と寒さにまみれた口からこぼれ落ちた。


宏光のただひとつの意志だった。

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葵井あい(プロフ) - AOIMIZUさん» ありがとうございます(;´д`)現代ではないのですが…読んで頂けるとありがたいですm(__)m (2019年2月17日 3時) (レス) id: 7c2696f152 (このIDを非表示/違反報告)
AOIMIZU(プロフ) - あまり見たことのない世界観ですね (2019年2月14日 1時) (レス) id: 15d60a7eea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:葵井あい | 作成日時:2019年1月10日 6時

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