飛び出す白 ページ44
「まあいいや。A、一緒にゲームしよ。」
私は人の通りがある階段でゲームをする気になれないので、下まで降り壁を背にスマホを手にした。
『一回だけだよ。』
「うん。」
sit！ kill！
『誠士郎はこのゲーム初めてどのくらい？』
「二千時間くらいプレーしてるかも。」
『沼ってるね。』
「Aの口からそんな言葉が出るなんて驚いた。」
『推しか…ネットサーフィンしてたら見かけた。』
「またすごい単語が聞こえたような…イテッ。」
『痛い？』
階段の折り返し部分に座っていた誠士郎が、誰かとぶつかり前のめりになる。
「あ、ごめん……。」
そんな場所に座っていたら、蹴飛ばされても仕方ないし相手も故意ではない。
『あ…。』
誠士郎の手からスマホが飛び出して、落ちていく様子がスローモーションに見えた次の瞬間＿＿同時にスマホを追って階段を飛んだ白。
『「え。」』
焦った第三者と声が重なる。
誠士郎は17段ある階段を膝を曲げた体制で飛ぶと、スマホに向け右足を伸ばし……受け止めた。
さらにつま先で止めたスマホを手元にパスしゲームを再開する。
「お、セーフ。まだ生きてた、ってAやられてるじゃん。」
『今の見てゲーム続けられるわけないでしょ！』
「だってスマホ壊れたらゲームできないし……あ、死んだ。」
「ちょっ……すげえなお前！サッカー部！？」
二人の会話に割って入る紫。
「あ、お金持ちの息子の人だ。おかねちょーだい。」
『誠士郎！？』
御影くんに向け手のひらを出すと「え？」と面食らった様子だった。
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作者名：まるこめみそ | 作成日時：2023年11月26日 15時
