your night.【谷山紀章】

#8 藤田凛3 ページ12

Rin Side


私がGRANRODEOのスタッフになったのは7年前｡


きっかけは､街で聴いた｢進化と堕落の二元論｣だった｡


その曲のメロディ､リズム､歌声､楽器の音色､歌詞 全てに魅了され､惚れ込んだ｡


知ってまもなく会社を辞め､彼らのレーベルに就職し何十回何百回と頼んでGRANRODEOのスタッフにつかせてもらった｡


初めて4人と接して､暖かい心に触れて｡


私は､幸せだった｡


こんな性格でも､こんなに実力がなくても｡飽きずに見てくれて､仕事をしてくれて｡


｢生きる｣ってこんなことなんだな､とすら思った｡


それでも｡それでもまだ､この性格を直せずにいて､辛い｡


そんな私に仕事の相談を持ちかけてもらえたり､一緒に仕事をしてくれる飯塚さんや瀧田さん､SHiNさんなんかは､本当に心の暖かい人なんだと思う｡でも､私には理解できない｡


谷山さんのことだけが､本当に理解できない｡


なんでこんな私に近づいて､笑顔で話し掛けてくれて､一緒に仕事をしてくれて｡なんで､私なのか｡なんで私を―――


そこまで思い起こして我に返る｡こんな事を考えていたら､キリがない｡


金髪を1本抜く｡この髪の毛も元々は､黒かったのにな｡


機種を変えたばかりの真新しいスマートフォンを机に置き､今度こそ部屋の明かりを消す｡


カチリ､と音がする｡紀章さんが､消える｡

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