声優オタクの声優さん ぱーと7

これからのこと ページ22

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壁に寄りかかって本を読んでいると「谷山さーん」と看護師さんの呼ぶ声が聞こえた。

良く通る声だなぁと職業病を発揮しつつ本をカバンにしまって診察室に向かう。




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中には優しそうな女性の先生とこれまた優しそうな看護師さん。
そして愛おしいA。

やべぇ。俺場違いすぎ。
考えても仕方ないから素直に座るけどさ。


俺が座ったのを見て先生は優しそうな笑みを浮かべた。




「旦那様がソワソワしてらっしゃるので結果からお伝えしますね」


「えっ！！………なんかすみません」


「いえいえ。それで結果なんですが、




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おめでとうございます！妊娠されてますよ！」




隣でAが鼻をすすったのがわかった。
当の俺はあんまり信じられないというか。



さっきまで散々家族が増えるとかパパになるとか色々考えていたのに、いざ面と向かってそう言われると実感がわかない。

でも別に嫌だとかそういう事じゃなくて。


自分が全く考えていなかった人生のシナリオだったから楽しみ半分不安半分。



若い頃から子どもを欲しがってたAよりも喜んでるし。人生何があるかわからないもんだな。




こういう時Aはちゃんとしている。
俺が感動して話が入ってこない中ちゃんと先生とこれからのことを話してたし、分からないことを細かく質問してた。


さすがに俺が知らないのはまずいから後でちゃんとAに聞く。




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全て終えて帰宅中。
体調が悪いAに運転させたくなくてタクシー使って病院に連れていった。

どうしても話したくてゆっくり歩いて帰っている。


子どもが出来たことで2人だけの時間も残り少ない。
家族が増えるのは嬉しいし楽しみだけど、やっぱ2人の時間も大事だし無くなるのは寂しい。


腕を組んで「寒いなぁ」とかくだらない日常会話を交わしつつでもどこかお互いに落ち着かない。




「いつ公表しようか？」


「安定期に入ってからかなぁ。それまでは誤魔化し誤魔化し仕事する…」


「………ライブ」


「……体調不良で演出変えようと思ってる。申し訳ないけど」


「しょうがないって。仕事より今は身体大事にしてね？」


「………そうだよね。しばらく我慢我慢」




仕事が好きなAにとってはかなりつらい期間かもしれないけど、本人は前向きに頑張ろうとしてる。

俺も不安だの怖いだの向いてないだの言ってる場合じゃないなぁ。




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