黄瀬涼太は好きな子にアタックできません8

352話 ページ9

「…俺もすげえ奥手だから、自分の思うこと言わないし」

ゆっくりと高尾くんの手が頭の後ろに回ってきた

「……好きだからこそ、…好きすぎてキスも怖かった」

…高尾くんの声がわたしの体を蝕んで、頭の中が彼でいっぱいになる


半年も付き合っているのに、片想いの時のような感覚

高尾くんはわたしと視線を晒さないまま口を開いた


「余裕なくて…言えてなかったけど」



「今日まじで可愛い」


花火で照らされる彼の顔は照れているわけでもなく、まっすぐな目で私を貫いた

「…んっ…」

見惚れていたら唇に温かい感触がして

腰に手が回ってきて、ぐいっと惹きつけられた

他の人とこういうことしてたのはやだけど…


…だからこそすごい上手で慣れてて、腰が砕けてトロトロになってしまいそう

「…リナ、」

唇に触れたまま名前を呟く彼の声はとても甘くて

「…好きだよ」

心臓が体の中で大きく鳴り響く

「…ぅん、っ、」


唇が触れるたびに体の芯が熱くなって脳が考えることをやめていくのを感じた


高尾くんの薄く開いた唇から、控えめに舌が主張してきて
わたしも薄く唇を開けて控えめに舌を出した


唇を合わせながら舌が触れた瞬間にまた体が反応して、まるで体ごと繋がっているかのような感覚に腰の力が抜けた


へなへなと脱力していくわたしに気がついた高尾くんはまたすかさず大きな手でわたしを支えて

私の舌を絡め取った


逃げられない、息もできない、…目の前にいる野生の高尾くんに服従しているようなキス


不思議と嫌じゃなくて…もっとして、って思ってしまう自分がいる

高尾くんの小さな色っぽい息とともに唇が離れたと思ったら、照らされた透明の糸が二人を繋いでいた


「…その顔、だめ」

わたしの頭を撫でてまた抱きしめて


高尾くんから聞こえる心臓の音も心なしか速いような気がした


黄瀬くんとAみたいに想いを素直に言える関係じゃないし

黄瀬くんみたいにわかりやすい男の人じゃないけど

高尾くんはわたしを信頼してくれて、…他の人には心も開いてないって思うとやっぱりわたしは高尾くんがいいなって思うよ


私も、感情壊れそうなくらい好き




心でそう思って、高尾くんの顔を見た


高尾くんの顔は真っ赤で、…


とたんに私も顔が赤くなる


「…ぇ、いま、口に出てた？」

私が呟くと同時に高尾くんはため息をついて



「…もーー！無理！！！」


と叫んでもう一度私を強く抱きしめた

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