黄瀬涼太は好きな子にアタックできません8

378話 ページ36

「おまえらー、ホームルーム始めるぞー、席につけー」という先生の声に、クラスのみんながガタガタと着席し始めた

先生は何やらプリントを教卓の上でトントンと整えながら口を開いた


「えーまず、第一回進路調査だ」

予想外の言葉にクラスがざわつく


「進路調査…？」
「はやくない…？」

と所々で声が上がり先生はため息をついた

「お前らもう高校3年だぞ、夏までにはちゃんと決めないと受験する奴らは大変になるからな！」

先生はそれと同時にプリントを揉んで、前の席に配り始めた


「進路調査かぁ〜」

俺にプリントを回しながら、お前どうすんの？と俺を見る尾川


「…うーん、、バスケは続けたい…ッスけど」

俺はプリントを受け取って筆箱を開けた

「まあそうだよなぁ、俺も続けられたらいいけど〜チーム持ってる大学も多くないしな」

そう言いながら尾川は背もたれを抱えるように座り直して、俺の机で一緒に書き始めた

せまいと文句を言ったら、いいじゃんいいじゃんと上手く流されてしまって

2人で仲良く記入した


隣ではリナちゃんとAが2人で話していて

ふと、目があった


『卒業』


その言葉が俺の胸を締め付けて
彼女の見慣れた制服とこの当たり前の時間が後少ししか残ってない現実という現実を叩きつけられているようで

それはAも同じなのか、俺たちが記入しているのを見てフイっと顔をそらされてしまった



俺は、志望校は未定、


バスケが強い学校に進学したいと書いた


それと同時にため息をついて

尾川が俺を見た


「進路にそんなに悩むのかよ」


お前ならいくらでもあるだろ、と心配そうに笑う尾川は少し俺の顔を見て察したようで


「……、その先どうするかはお前らが決めることだし、気にしなくていいんじゃねーの」

と言いながら下を向いて尾川もペンを走らせた



去年の夏、火神っちがアメリカに飛んだ


NBAでも教えているようなコーチについているらしい

不思議と焦りはないけど、でもやっぱり羨ましいと思うし…それで強くなって追い付けなるのは悔しいと感じる


きっと俺が大学を卒業する頃には火神は立派なバスケットボールプレイヤーとしてアメリカで活躍しているだろう


…俺も、…もっと、したい。




留学を考えるとどうしても頭をよぎるのが彼女の存在



今は、考えたくない


手放すことなんてできない



俺たちは記入を終えて、後ろにひっくり返してプリントを尾川に渡した

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