黄瀬涼太は好きな子にアタックできません8

346話 ページ3

「…、」

頬を伝う涙


お尻を触られたわけじゃないから、痴漢というには難しいと駅員さんに言われて
男の人を帰らせて、ベンチに座るわたしと緑間くん


大丈夫か、なんて言いながら私に差し出したハンカチも緑


「…なんでみどりばっかなの、、」

自分のタオルで涙を拭きながらツッコむと、「ラッキーアイテムだったのだよ」といつもどおりの緑間くん

女の人と距離を縮めるのは苦手なのだろうか、少し離れて座る彼は心なしかおどおどしている


彼は少しため息をついて、下を向いて「高尾じゃなくて悪いな」とつぶやいた


高尾くんが良かったなんて一ミリも思ってないし、今会ったら感情おかしくなって何が何だかわかんなくなってしまう

そう思った途端にまたブワッとあふれる涙

「…うぅ、ぅぁああん、」

情けなく声を出して泣き出した私に、どうしたのだよ！と慌てる緑間くん

ほんとにごめん、ちがうの、ごめんなさい、


彼は泣き止まない私をみて、「高尾と何かあったのか」と心配そうな声で私に囁いた

何も答えずに泣き続ける私

緑間くんはため息をついて、「通りで高尾もおかしいと思ったのだよ」とつぶやいた


思わず「ふぇ、？」と情けない声が出る

だって、嫉妬して勝手に心配してるのは私だけのはず

高尾くんもおかしいって…


「今日、このあと高尾に会おうと誘われた」

緑間くんの言葉が心臓を一突きした




あぁ、


それってもう、…手遅れってことなんじゃ



…そうか、もしかして


「…リナちゃんと別れたいんだけど、って相談だよきっと」

私は涙を拭って震える声で小さくつぶやいた


緑間くんは目を見開いて、「…何、？」と声を漏らした

それ以上話そうと思っても、震える声が邪魔して喋ることができない

駅のホームで、人目のつかないベンチで緑間くんの前で泣き乱れている


「もしかしてお前もバカなのか」

その言葉に震えるのをやめて情けない声を漏らした私の口

緑間くんはため息を漏らして、「半年記念日迎えたときいたから距離が縮まったかと思えば」と呆れた様子で立ち上がった


「むしろもっと高尾に甘えるべきなのだよ」

彼はメガネをチャっと直して、待ち合わせに遅れてしまう、俺は帰るぞとつぶやいて私の元を去った



涙は乾いていた

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