色欲の公爵3 ページ5
「ふうん…」
スージーQの話を聞いたジョセフは、何かを考えたような目でシーザーに視線を向ける。
すると、はっ、としたスージーQがシーザーに向かって頭を下げた。
「ごめんなさい！ご本人の前でこんな話するもんじゃないわね！」
「いや、構いませんよ…それにしてもよくご存知で…。そんなに広がっていたんだな…あの話」
シーザーはスージーQに向かってゆっくりと首を横に振った後、ポツリと呟いた。
スージーQはシーザーの言葉を聞いて安心したのか、ニコリと微笑みを浮かべる。
「そうだわ、せっかくお名前を教えてくれたのに、こちらも自己紹介をしなきゃ失礼よね！私はスージーQ！この町でウエイトレスをしているの！それでこちらはジョセフ。商人の息子さんで一応私の恋人なんだけど…ちょっとガサツで失礼なところがあるというか？」
「にゃにィ〜〜！？」
スージーQの言葉を聞いて聞き捨てならん、と言わんばかりに彼女の顔を見るジョセフ。しかし…。
「でも、そんなとこが好きで付き合い始めたところあるのよねぇ…」
「…！！スージー！！可愛いヤツめー！」
「キャッ！ちょっとー！公爵様がみてるでしょー！」
頬を染めるスージーQを思い切り抱きしめるジョセフ。口でこそ文句を言っている彼女だが、表情は満更でもなさげだ。
目の前でじゃれあい始めた二人を見ていたシーザーは、一瞬目付きをギロリと鋭くさせた…が、すぐに優しい目に戻った。
コホン、と咳払いをしてシーザーは2人に呼びかける。2人はハッと我に返ってシーザーの方を見た。
「いやぁ、2人は本当に仲睦まじいんだな。思わず嫉妬してしまいそうだ…。2人の時間を邪魔をするのも気が引ける。俺はこの辺りで失礼するよ」
「そうしてくれると有難いぜ。まっ、俺ほどじゃあねえがあんたも相当な色男だし、すぐに可愛い恋人が見つかる…って、おい！」
ハハッ、と笑いながら話すジョセフを他所に、シーザーはすっ、とスージーQに近寄り、何かを差し出す。それは、彼女の頭に飾られた髪飾りのように赤く彩られた可憐な一輪の薔薇だった。
「スージーQ…今日は出会えてよかった。少しの時間だけでも君のように愛らしい人と話せたこと、俺は忘れない。この薔薇は出会えた記念に…受け取ってくれないか？」
シーザーが甘い声でスージーQにそう囁いたその時、スージーQを見つめていたシーザーの瞳が、真紅の色に輝いた…。
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作者名：Choco | 作成日時：2021年1月22日 23時
