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｢そういえば、最近サブスクで見た韓国ドラマにお酒の話が出てきた｣
自分の父親の復讐を誓う主人公と、一緒に居酒屋で働く仲間たち。主人公が経営するお店の名前はタンバム、と言い、韓国語で甘い夜、という意味だ。
苦い自分の人生を少しでも甘くしたい。そんな主人公の願いが込められた店名。話の中にも度々酒の味の話が出てきた。
｢気のせいかもしんないけど、今ニカに貰ったこのお酒、私は少し苦いや｣
ニ｢苦い、か｣
主人公のように父親を失い、長年苦しみ続けてきた末の苦みではないだろうが、私も最近自分のことで悩む時間が増えた。
父や母のこと、この探偵事務所のこと、皆のこと、自分のこと。何も知らないし、分からない自分が少し悔しい。
ニ｢ちょっと1口飲んでみるわ｣
｢大丈夫？｣
ニ｢大丈夫、こっちの缶にまだ少し入ってるから｣
ニカはそのお酒を口にすると甘！と目をまん丸にした。
やっぱり私の舌がおかしいのだろうか。気になってもう一口飲んでみるが、やっぱり後味が苦い。
｢味の感じ方は人それぞれなのかもしれない｣
ニ｢んー、そうだな｣
｢そんな考え込まなくても。ドラマの見すぎかもしれないし、大丈夫だよ｣
ニ｢その主人公みたいにAにも甘く感じるようにしたいよね｣
｢え？｣
ニカの事だから、｢何馬鹿なこと言ってんだよー！｣って軽く流してくれると思ってた。こんな真剣に考えられると、少し恥ずかしい反面、嬉しい。
｢でも甘く感じる日は、衝撃的なことが沢山ある日だっていってたよ｣
ニ｢嬉しい衝撃とか驚きとかでいいじゃん｣
｢…まぁ｣
ニ｢俺は何が今のAを悩ませているのか分からないけれど、せっかく飲むなら、Aには何も悩まず、ただ美味しいって飲んでて欲しいな｣
ニカなりに私の事を心配してくれているのだろうか。
ふっと笑みがこぼれる。大丈夫、今はまだ難しいかもしれないけれど、きっと時間はかかるけれど、まだ覚悟は出来ないけれど。私は、私自身の手で甘い夜を手に入れてみせる。
｢ありがとう｣
ニ｢もっかい乾杯しよ。えーっと、何だっけ｣
｢特にセリフとかがある訳じゃないんだけど。そうだな。じゃあ｣
｢私たちの甘い夜に乾杯｣
ニ｢かんぱーい！｣
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作者名：きのこ丸 | 作成日時：2020年11月18日 3時
