自由人と黄色い傘 ページ26
元所長に、この家に女の子が1人来ると聞かされた時、1番最初に心配したのは玉のことだった。
人見知りな玉と気の強いA。玉は話しかけないし、Aは反抗的だしで、最初は全く仲良くなる気配がなかった。
｢玉、今日夜ミヤとゲームしようって言ってるんだけど、玉も来るよね？｣
玉｢おー、やるやる。リビングからお菓子持ってこうぜ｣
｢コンソメ味のポテチあったかな｣
玉｢あ、こないだ誰か食べてたな。後で買いに行こう｣
｢えー、雨降ってるのに？｣
それが今ではすっかり仲良しで、仲のいい兄弟にも、寄り添い合う恋人のようにも見える時がある。
なぜここまで仲良くなったのか。それは今日みたいな雨の日だった。
宮｢A、傘持ってかないと。今日の天気予報雨だっていってたよ？｣
｢傘嫌いなの。行ってきます｣
まだ俺らと一緒に暮らし始めて間もない頃。
まだ俺たちに警戒心があったのか、Aは会話してくれるようになったものの、まだまだ素っ気なくて。
雨の日は何故か傘を持つのが苦手だと言って、いつも俺が駅まで迎えに行くのがテンプレだった。女の子が1人で帰るのも危ないし、傘をさしながら歩く時間はAが少し話してくれるから、むしろ楽しかった。
しかし、ある日その連絡が来なかった。
宮｢どうしよう。雨降ってるのに連絡来ない｣
北｢心配しすぎじゃねーの？流石に今日くらいは傘持ってってるだろ｣
宮｢いや、今日も断られたんだ｣
想像すればするほど悪い方向に考えは向いてしまう。
いてもたっても居られなくなって、連絡しようとした時、ドアが開いた。傘を畳む玉と気まずそうなAの姿が見えて俺達は皆びっくりしてしまった。
玉｢ただいま｣
｢…ただいま｣
千｢玉！Aも｣
藤｢え、もしかして2人一緒に帰ってきたの｣
Aは頷いて2階へと駆け上がっていく。
玉の肩はかなり濡れていて、Aの制服が濡れないようにしてくれていたんだろうと容易に想像がついた。
その日からAは雨の予報があると伝えると、渋々玉の傘を持っていくようになった。玉の傘は黄色というなかなかに目立つ色なのに、なぜだろうと疑問に思い玉に聞いてみた。
宮｢玉、Aと仲良くなったの？｣
玉｢んー、どうだろ。まだわかんないな。でもAに安心して甘えてもらえるようにしなきゃなって｣
玉なりに考えたんだと思う。
俺は少し安心して笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 68人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きのこ丸 | 作成日時：2020年11月18日 3時
