… ページ23
『招待状を。なんだか見たことない顔ですね』
北｢ご縁ありまして藤ヶ谷太輔様にご招待に預かりました。うちの若手女優も連れてきましたよ｣
｢はじめまして、マイコと申します｣
え、普通売り出し中の女優さんならもっと可愛い名前にしない？何マイコって。思ってたよりずっとダサいじゃん。
心の中で文句を垂れながら愛想笑いを続ける。ミヤに作ってもらった偽物の招待状を渡してビルのエレベーターに乗った。
横を向くといつもよりずっとかっこいい相棒の姿。
パリッと決めたスーツ姿に緩くセットされた髪。変装用の銀縁メガネが私の好みどストライク過ぎて少し悔しい。
かっこいいと口に出してしまったし、ボソッと綺麗だ、と言われたせいで目を合わせるのも少し恥ずかしい。
50階が会場らしく扉が開くとそこは夜とは思えない程の煌びやかな世界が広がっていた。宝石のようなタパスに、テレビで見た事のある有名人達がシャンパングラスを傾けている。
売り出し中の若手女優という設定だから多少なら許されるのだろうが、いつもの生活とかけ離れすぎていて当たりをキョロキョロと見回した。すると見慣れた顔がこちらを向いて歩いてきた。
藤｢あー！来栖さんご無沙汰してます｣
北｢藤ヶ谷さん今日もかっこいいですね。今日はうちの新人女優連れてきましたよ！｣
｢はじめまして。本物の藤ヶ谷さんだ。テレビで見るよりかっこいいですね｣
昨日も見たけどね、家で。あくまでも自然に見えるような会話を繰り広げていると、ガヤさんがコソッと耳打ちしてくる。
藤｢今日のA本当に綺麗だね｣
｢あ…っ｣
藤｢じゃあまた後でね｣
かあっと耳まで熱くなって口を抑えた。
ミツに小突かれて何も無かったふりをする。スマートフォン型の通信機で潜入してガヤさんと合流したことを連絡した。
『君綺麗だね。どこの子？』
北｢今売り出し中のマイコちゃんでーす！｣
｢はじめまして！｣
酔わない程度にお酒を飲みながらパーティ会場に紛れた。ガヤさんは恐らくあの女優と一緒にいる。ガヤさんが動けば視界に入るように私達も動いた。
｢ごめん、ミツ、お花詰んでくるわ｣
北｢あいよ。気をつけろよ｣
トイレに入ると喧騒が少し蓋されたみたいで、ようやく一息つくことができた。コツコツと新しい足音が聞こえてきて誰か入ってきたことに気付いた。
｢あ…｣
今回のターゲット、安田ユリアだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 68人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きのこ丸 | 作成日時：2020年11月18日 3時
