出会い22 ページ22
バイトを始めて数週間。
受け付けの仕事にも慣れ、職場の先輩達にも良くしてもらい、順風満帆に思えた。
いつもは5時頃に仕事が終わるのだが、今日はインフルエンザワクチンを打つ子供やお年寄りで病院が溢れかえり、いつもより1時間近く遅くなってしまった。
もちろん、遅くなる前に銃兎さんへ連絡入れてある。銃兎さんは私に合わせて仕事を少し先送りでやっておくから、終わったら連絡しなさいと言ってくれた。
「白狐さん、遅くまでごめんね。今日はもう終わっていいよ」
「はい、お疲れ様でした。お先に失礼します」
職場のロッカーに向かい、首から下げていたタグをかけた。まだ着替えに手をつけないままスマホを手に取り、銃兎さんに連絡を入れた。
「もしもし、銃兎さん?今終わりました。ごめんなさい」
「あぁ、大丈夫ですよ。思っていたより早かったですね。じゃあ私も今から帰ります。夕飯は2人で作りましょう」
「はい」
私が仕事を始めてからは、前にも増して家事は2人で分担して行うようになっていた。銃兎さんは見た目にもオシャレな、美味しいご飯をよく作ってくれる。
院内の人に頭を下げ、サヨウナラと声をかけ銃兎さんも待っているであろう自宅へ急いだ。
いつもの1,5倍くらいのスピードで歩いていた。
しかし、それを遮るかのように1人の女性が私の前に立った。
あの時カフェにいた大人っぽいお姉さんだ。
今日もアイラインは猫みたいにぐっと釣り上がっていて、唇はぽってりと色っぽい。
「...銃兎さんの元カノさん」
「私には順という名前があるの。そんなふざけた呼び名で呼ばないでちょうだい」
挨拶もしないうちに腕を捕まれ、順さんはぐんぐんと歩き出す。抵抗も出来ないまま人気のない路地裏に辛てこられた。
「あなた、私が新しい男を紹介してあげるからそいつと付き合いなさい。んで、銃兎をもう諦めてちょうだい」
なるほど、理解出来た。
この人は、順さんはもう1度銃兎さんとお付き合いがしたいんだ。でも、その提案を素直に頷く程、意思は固くない。
「申し訳ありませんが、その提案を素直に聞き入れほど私の気持ちは柔くありません。」
喉の奥からでるその声はブルブルと震えてその震えは自分では止められない。
目の前で唇が意地悪そうに歪んだ。
そして、路地裏に乾いた音が鳴り響く。
その音が、自分が平手打ちされた音と気付くまでさほど時間はかからなかった。
719人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きのこ丸(プロフ) - ソラさん» コメントありがとうございます!最近更新できていなくて本当に申し訳ありません。もうそろそろラストスパートをかけていこうと思っておりますのでどうかお楽しみに。これからもよろしくお願いします。 (2019年2月8日 1時) (レス) id: c6e8e226d4 (このIDを非表示/違反報告)
ソラ - 滅茶苦茶自分好みの小説ですごい好きです()これからも全力で応援してます!更新頑張って下さい! (2019年1月17日 20時) (レス) id: 1eb8274d38 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ丸(プロフ) - ソーダさん» コメントありがとうございます。お褒めいただき光栄です。ぜひこの後もどきどきを楽しんでいただければ幸いです。これからもよろしくお願いします。 (2018年12月19日 8時) (レス) id: c6e8e226d4 (このIDを非表示/違反報告)
ソーダ - すっっっっばらしい小説ですね!!銃兎さんからの愛情とか設定も細やかで続きがとてもドキドキします!!更新頑張ってください!!!待ってます!!! (2018年12月19日 0時) (レス) id: 995cf675ed (このIDを非表示/違反報告)
きのこ丸(プロフ) - ヒョオ()さん» コメントありがとうございます。先の展開が気になるような話の進め方に出来ているようで良かったです。ぜひこの先もハラハラドキドキして下さい笑。これからもご愛読よろしくお願いします。 (2018年12月15日 11時) (レス) id: c6e8e226d4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きのこ丸 | 作成日時:2018年11月28日 17時