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出会い20 ページ20

カフェから出た後も気まずい雰囲気は変わらなかった。銃兎さんも口を開かなければ、私も何も聞かなかったから。





そのまま道なりにあてもなく2人でとぼとぼと歩いた。気付けば港町に着いていた。
冬の潮風は冷たい。思わず身震いすると、ふわりと首にマフラーを巻かれた。





「銃兎さん、寒くないんですか」

「構わん、寒いなら付けてろ。それと、もう今日は帰ろう」

「...」

「お前に話したいこともある。このまま続行してもAが楽しくないだろ。帰るぞ」





手を引かれるまま港町が遠ざかっていく。
地平線を走る船の黒煙は今の私の心にそっくり。





心の奥底にどす黒い感情を抱いているくせに、言い出せないままそれは空気に溶けて消えていくだけ。






家に着くと互いにソファに腰を下ろした。
銃兎さんが熱々の珈琲を入れてくれる。凍えた指先にはちょうどいい温度だった。





「さっきの人は...元カノさんですか?」

「いや、もっと歪んだ関係の奴だ。あいつだけじゃない。そういう奴はヨコハマ探せば何人かはいる」





特段引くことも驚くこともなかった。そういえばクローゼットに服が置いてあったこともあった。
確かにあの女の人なら似合うな、なんて間抜けな考えを展開している間も銃兎さんは話を続ける。





「あいつは特にタチが悪くてな。私物置いて帰ったり、今でもこうやって声をかけてくる」





埋まらない悲しみをたくさんの女性で繋いでもきっと埋まらなかったのだろう。ましてや、未だに引きずってる人もいる。銃兎さんも大変だろう。





「黙ってて悪かったな。引いたか?」

「いえ、別に」

「...そうか」





珍しく哀しげな瞳をうかべる銃兎さんの手を恐る恐る握った。一瞬は驚いた様子を見せたが、すぐに握り直しこちらを向いてくれた。





「私は、私の事を今好きでいてもらえてるだけで十分です。銃兎さんの過去の女性関係とか、気にしません」





なぜなら私は、助けてもらった身だから。
醜い傷も、醜い過去も全て見せた。だから銃兎さんの過去を知るくらいなんてことない。
さっきの煙のような黒い心は消えた。






「WinWinじゃないですか、ようやく」

「...お前らしいな」





そう言って私も、銃兎さんも笑う。






「Aさえ良ければもう1度外出しませんか。海の見えるレストランを予約してたんですが」

「はい、ぜひ」





私の右手を赤い手袋が包み込む。
1度目にして2度目のデートが始まろうとしていた。

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きのこ丸(プロフ) - ソラさん» コメントありがとうございます!最近更新できていなくて本当に申し訳ありません。もうそろそろラストスパートをかけていこうと思っておりますのでどうかお楽しみに。これからもよろしくお願いします。 (2019年2月8日 1時) (レス) id: c6e8e226d4 (このIDを非表示/違反報告)
ソラ - 滅茶苦茶自分好みの小説ですごい好きです()これからも全力で応援してます!更新頑張って下さい! (2019年1月17日 20時) (レス) id: 1eb8274d38 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ丸(プロフ) - ソーダさん» コメントありがとうございます。お褒めいただき光栄です。ぜひこの後もどきどきを楽しんでいただければ幸いです。これからもよろしくお願いします。 (2018年12月19日 8時) (レス) id: c6e8e226d4 (このIDを非表示/違反報告)
ソーダ - すっっっっばらしい小説ですね!!銃兎さんからの愛情とか設定も細やかで続きがとてもドキドキします!!更新頑張ってください!!!待ってます!!! (2018年12月19日 0時) (レス) id: 995cf675ed (このIDを非表示/違反報告)
きのこ丸(プロフ) - ヒョオ()さん» コメントありがとうございます。先の展開が気になるような話の進め方に出来ているようで良かったです。ぜひこの先もハラハラドキドキして下さい笑。これからもご愛読よろしくお願いします。 (2018年12月15日 11時) (レス) id: c6e8e226d4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きのこ丸 | 作成日時:2018年11月28日 17時

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