混乱の中で ページ4
久々に傷のない者の姿を見た気がする。絶望していない晴れやかな顔を見た気がする。
僕は、前田に何を言えばいいか分からなかった。
「…どうされましたか？やはりまだ具合が悪いのでは……」
心配するように僕の顔を覗き見る彼に、その澄んだ表情に、恐怖すら感じた。
何を考えているのか、自分でもよく分からなくなっていく。
ここは綺麗に見せかけて、やっぱり刀を大事にしない本丸なのではないだろうか。
人間は汚い、だからきっとここの主人も…。
気付けば、僕は叫んでいた。
「やめて、やめて！どうしてそんな笑顔で居られるのさ！？ここは本丸なんだよ？いつ主が次の任務を持ってくるのか分からない、いつ僕らに愛想を尽かすか分からない、いつ折られるか分からないのに…！」
もう、何も分からない。本当に何が何だかよく分からないまま、布団を投げ出して外に出ようと駆け出す。
「お待ちください！其方はまだ修復が…」
「何だっ…うあっ！？」
畳からばきぃ、と盛大な音がする。
勢いがついていたから流石に止まれない。足は木製の床の割れ目にはまり、身体は前に投げ出されていく。
折角治療して貰ったのに、また怪我が増えるのか…
「…ちっ、次から次へと何事だ」
身体が倒れない。けれど、首が絞められたように苦しい。
「…いぁ、ぁ……、…ぁ、ぃぇ、よ…！」(痛い、放してよ…！)
声にならない声が漏れた。
「全く、死にかけでここまでするとは…、呆れたぞ。大和守安定」
そういうと、声の主は僕を安全な場所で解放した。これでまた息が出来る。
…それにしても、前田の次は誰だ？
「よ、良かったです…。助かりました、膝丸さん」
「はあ…、他の太刀ならば間に合っていないぞ」
膝丸？そんな名前の太刀…聞いたことがない。
その姿を見て、考えたけれど、分からない。というか、僕は彼を知らないんだ。
「…む？そんなにまじまじと俺を見て、どうしたのだ？」
「ああ、いや…。何でもない」
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さかな式(プロフ) - 九十九さん» 嬉しいです、ありがとうございます！拙い文章ですが、宜しくお願いします (2018年1月16日 20時) (
レス) id: 5d86fbdd38 (このIDを非表示/違反報告)
九十九(プロフ) - 面白かったです！頑張ってください！楽しみにしてますよ。 (2018年1月15日 21時) (レス) id: 6ccd555bc2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さかな式 | 作成日時：2018年1月14日 15時
