ストロベリースカッシュ《三ツ谷隆》

20 ページ20

.




『わざわざありがとう』

「おー、気にすんな」



Aの隣を久々に歩いた。

オレと身長も変わらない彼女の肩が触れるくらい近くに居るのは、久々で。
心臓の音が聞こえちまうんじゃないか、気が気じゃなかった。

少しぎこち無い感じもあったが、前みたいに笑ってバカ言い合って、すげー楽しい時間はあっという間。

オレは右、Aは左の曲がり角。

まだ明るいから別に良いと言われたし、家まで送るとか…そんな関係じゃねぇけど、1分1秒でもAの側に居たくて家まで送った。

拒否られるかなって思ったけど、受け入れてくれたAの事をまた吹っ切れなくなりそうだ。



「押し倒しちまえば良いじゃん」



そんな無茶を言うのはマイキー。



「ウチだったらそんな事されたら大嫌いになるかな、ケンちゃんなら良いケド」



そんな事を言ってドラケンの腕に抱きつくのはエマ。



「つーか、何で知ってんだよ」

「ウチはケンちゃんから聞いた」

「オレはエマから」



オレ等はマイキーから〜っといった具合に東卍中に広まったオレの片思い。
ワリィって謝るドラケンは、いつの間にかエマとくっついていて仲良さそうなの見てると普通に羨ましい。



「てゆーか、三ツ谷の彼女、AAさんだよね？」

「知ってんの？彼女じゃねぇけど」

「ウチの高校でも有名」



陸上部の合同練習に来ていたAが、走るのめっちゃ早くてスタイル良くて笑った顔が可愛いと有名らしい。
何人か告白もしたと言う言葉に、余裕を見せる事すら忘れてしまう。



「でも…」

「でも？」

「好きな人が居るからって皆フラレてるみたいだよ」



アイツに好きな男が居るなんて初耳。

誰だよ、クソって言った言葉は思いの外デケー声だったらしく、周りに居た奴等に盛大に笑われた。









.

21→←19

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す