10 終 ページ16
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ト「カメラ貸して」
彼に操作されて三脚の上に設置されたカメラは、海の方を向いている。
いつの間にかそろそろ夕暮れ。
ト「のぞいてみ」
ぼんやりしたまま立ち上がってカメラを覗き込むと、後ろから伸びてきた手がカメラに入る光を調整して、近づいた拍子に後ろから抱きしめられたみたいになった。
いい匂いがして、ふわふわの羽毛みたいな彼の髪が海風に揺れて、恥ずかしくてうつむいている私の頬にかかる。
どきどきする。
どきどきするから、私はちゃんと生きているな、とばかみたいなことを思った。
ト「ほら」
促されて顔を上げて見た目の前の画面には、あの、青いグラデーションの空が映っていた。
澄んだ青。見たことのないような、圧倒的な。
ト「ブルーモーメントっていうんやって」
ト「晴れの日のおひさまが見え隠れするまでの間、10分くらいしか見れんけど」
ト「光の入れ方にコツがあるみたい。ネットに書いてあった」
私の世界にも、ちゃんとあった。
きれいなもの。
ト「なんか言うてよ、感想」
「…ちょっと、なんも言えない、けど」
とりあえず
「ありがとう」
ト「カメラの設定をちゃんとすれば、朝も撮れると思うで」
私たちはそのままで、夕日が沈んでいく空を黙って見ていた。
青から群青がかっていく空が、ゆっくりゆっくり紫に変わって、やがて完全な暗闇が訪れる。
ふと、後ろから包まれていた気配が消えて、ちょっと離れたところで声が聞こえる。
ト「ほな、僕帰るわ」
「え、送るよ」
ト「大丈夫」
声はどんどん遠ざかっていく。
「明日の朝、撮ってみる」
ト「撮れたら見せて」
名前も連絡先も知らないのに。
声はずいぶん遠くから聞こえて、さっきまですぐ後ろにいた彼がもう離れたところにいる気がする。
気配はもう、わからない。
明日はきっと、あの空を見て、青い鳥が家に訪れる。
そしたらまた、会えるような気がしている。
ト「ばいばい」
波の音に紛れて、羽ばたきが聞こえた。
Fin
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きりん虫(プロフ) - ブルームーンさん» ガムの背中は広くてあったかい☺️ (2022年2月25日 12時) (
レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - 究極の愛の場所はそこなんだなぁと(*´-`)おんぶ( *´艸｀) (2022年2月25日 5時) (レス) id: d5063d2f63 (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - ブルームーンさん» わーん！ブルームーンさん！ご無沙汰していました！ありがとうございます！！ (2021年2月27日 11時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - わぁいいお話…も一回読む♪きりんむしさんの青さんに会いたいなぁと思ってたんです(*^^*)ｳﾚｼｲﾅ (2021年2月27日 7時) (レス) id: d5063d2f63 (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - めろんぱんさん» めろんぱんさん！こちらこそありがとうございます！！！！！！大好きです！！ (2020年10月31日 23時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりん虫
| 作成日時：2020年10月31日 16時
