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「交代。私が撮るよ」
手を出したら彼は素直にカメラを私にくれた。
ト「ちょっとだけ遊んできてええ？」
頷いたらうずうずした様子で本当に波打ち際に走っていった。
その後ろ姿を、1枚。
駆けていく天使。
海。
空。
いつも暗がりの部屋の中でばかりレンズを覗いていたから、まぶしい風景をどうやって切り取っていいのかわからない。
波打ち際まで駆けていった彼は、絶妙に波が届かないところで楽しんでいるらしい。
カナヅチなのかな、もしかして。
しばらくしたら戻ってきて、私たちは寒空の下で震えながら、見た目いまいちだけれど奇跡的においしいたまごやきを分け合って食べた。
「根本的に違った」
ト「うん？」
「あのひとが見てたものと私が見てたものは全然、同時に見てたたまごやきも空も、まったく別のものだった」
彼はリスみたいに頬を膨らませたあとで、もぐもぐしてごっくんした。
ト「違うから、好きになったんやろ」
ト「AちゃんにはAちゃんの世界がある」
あのひとは私に別れを告げて家を出た後で、実家に戻って病気で亡くなった。
私と一緒にいた時から病魔はあのひとを蝕んでいたはずで、そんなことは知らずにのほほんとのんきにずっと一緒にいられるんだと思っていた私は置いて行かれてただただ混乱していた。
なんでいなくなったの
私はどうしたらいいの
ずっと同じものを見ていくんだと思ったのに
本当はもう、あのひとの顔をちゃんと思い出せない。
写真にうつるかも、と思ったのだ。
あのひとが置いていったカメラと三脚で、あのひとが日課にしていた写真を撮っていたら
写真に写り込んでくれるか、あの奇跡みたいな写真を撮って私に見せてくれるんじゃないか
もう確実に時は進んでいて、いくら同じ構図でシャッターを押しても同じ時間には戻らないし、あのひとが見ていた世界は私のとは違うのに。
私には私の世界がある。
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きりん虫(プロフ) - ブルームーンさん» ガムの背中は広くてあったかい☺️ (2022年2月25日 12時) (
レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - 究極の愛の場所はそこなんだなぁと(*´-`)おんぶ( *´艸｀) (2022年2月25日 5時) (レス) id: d5063d2f63 (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - ブルームーンさん» わーん！ブルームーンさん！ご無沙汰していました！ありがとうございます！！ (2021年2月27日 11時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - わぁいいお話…も一回読む♪きりんむしさんの青さんに会いたいなぁと思ってたんです(*^^*)ｳﾚｼｲﾅ (2021年2月27日 7時) (レス) id: d5063d2f63 (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - めろんぱんさん» めろんぱんさん！こちらこそありがとうございます！！！！！！大好きです！！ (2020年10月31日 23時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりん虫
| 作成日時：2020年10月31日 16時
