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マ「ありがとうな」
広くなったキッチンやクローゼットに戸惑いながら食器や荷物を片付けていたら、急にマックが言った。
「こちらこそ、なんだけど、何が？」
マ「トッポの事と、これも」
みんなの分のルームウエアをちょっと持ち上げて微笑する。きれいで思わず見とれてしまった。
「揚げ足取られたけど」
マ「ふっ、ほんまやな」
キッチンにはプロ仕様の調理器具と大量のお酒が、リビングにはさりげなくゲーム機と複数のコントローラーが置いてあって、入り浸る気満々、私の部屋は吸血鬼の別宅になりそうな気がしている。
「みんながあんなに食べてるの初めて見た」
マ「せやなぁ。花見ん時も飲んでばっかりやったし。忙しくてなかなか揃えへんからな、久々やったかも」
急に引き寄せられて、気づいたら後ろから抱きしめられていた。
ガムはいないし、2人きりでドキドキする状況のはずなのに、何だかとても安心する。
やっぱり私達は、ぴったり合わさっていた。
マ「Aのおかげで久々楽しかった。ありがとう」
「いえいえ。痛い思いをした甲斐があったよ」
もう、ソワソワしない。怖くない。
マ「なぁ」
マ「人間が闇の者のパーティーに呼ばれたときのルール、知ってた？」
「ルール？」
マ「“闇の者のパーティーに呼ばれたら、決して食事は食べてはいけない。食べれば二度と人間の世界には戻れない”」
「…知らなかった」
いっぱい食べちゃった。おいしかったから。確実に太ったし。
マ「そうやと思ったけど」
ふふ、とふきだしたマックの息が、耳元にかかってくすぐったい。
きっと、知ってても知らなくても結果は同じだったんじゃないかと思う。
くるっと振り返ったら、唇が触れそうなほど近くに、きれいなマックの顔があった。
微笑した形のままうっすら開いたその口からは、白い歯がのぞいている。
ジャッキーほどあからさまではないけれど、その歯はやっぱり鋭く光っていて、血で赤く染まる所を想像したら、体の芯が熱くなった。
私はマックが、私の血で赤く染まる所を、私の血に夢中になる所を、見たい。
「戻れなくてもいい」
マ「…ほんまに？」
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作者名：きりん虫
| 作成日時：2020年7月6日 21時
