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訳も分からず強引に背中を押されて緑のワーゲンバスのドアが開かれると、そこには見覚えのある私のキャリーバックと、その上にスンっとすました青いインコ。
「なにこれ、私の部屋に入ったの？」
ジャ「トッポがな。管理人さんの記憶ちょっと操作して鍵開けた」
インコのトッポはこっちを見ないでスンっとしている。
困惑してジャッキーを見ると、彼は私を軽々と担いで座席に乗せて、ギブスの上から私の足首に触れた。
ジャ「全治1週間ってとこか。どっちにしろこの足でお前の部屋は無理やから、このまま俺らん家行くで」
「全治2か月って言われたんだけど」
ジャッキーはニヤッと笑って八重歯を見せた。
ジャ「俺の能力、言ってへんかった？“ひーらー”やで」
“ヒーラー”。治癒能力ってこと？
ジャ「お前今日から俺の患者な。ほれ、お医者さんごっこしに行くで」
「やだ、家に帰る」
ジャ「痛いんやろうが、やせ我慢してからに」
ジャッキーがギブスの上からふうっと息を吹きかけると、足首がヒヤッとして痛みが少し和らいだ。
「…はぁ。待って、それでトッポは何か怒ってるの？」
ジャ「お前、トッポの忠告聞いたんやろ？せっかく教えたったのに回避できる危険を避けへんかったから」
「…ああ、そっか」
朝のメッセージ。確かに、忘れていた。
この人達は、みんなさりげなさ過ぎる。ビジュアルがいい事以外は普通のお兄ちゃんみたいだから。
吸血鬼だっていう事とか、特殊能力がある事とか、契約の事とか、すぐに忘れてしまう。
…契約。
「…待って、マックは？」
私は吸血鬼の一人、マックと契約をしているらしい。実感はないけれど、契約者は心身に何かあればお互いに影響する、と言っていたはず。もしかしてマックに影響してしまったんじゃ、ということに今さら思い当たる。
ジャッキーはまた、ニヤッと笑った。
ジャ「足首押さえて飛び上がって気絶した。家で寝てる」
「うそッ。やだ、早く帰ろう」
そうして私は、1週間、吸血鬼の館に住むことになった。
誓って言うけれども、私の希望ではない。
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作者名：きりん虫
| 作成日時：2020年7月6日 21時
