sweet parade-紫黒橙- ページ22
sweet parade -紫黒橙-
吸血鬼の館に住むことになった。
誓って言うけれども、私の希望ではない。
昨日の朝、目覚ましのアラームを止めて、スマホを確認したら、トッポから変なメッセージが入っていた。
“あしもとにちゅうい”
今日のインコ占い？
トッポは吸血鬼の特殊能力で、ちょっとだけ未来がわかるらしい。私は今までその能力にお目にかかったことがなくて、本人も他の吸血鬼たちも、それはほんとに“ちょっとだけ”だから当てにならない、と言っていた。
吸血鬼たちの能力にはそれぞれ幅があるらしい。
私の中でトッポの能力は可愛らしいインコになることで、人間体であっても場を和ませる天然のみんなの天使であることで。
だから、天使ちゃんからのそのメッセージの事は、朝の準備のドタバタと一緒にすぐに忘れてしまった。
それが、いけなかった。
結論から言うと、私は取材先から会社に戻る途中に階段から落ちて、足の骨を折った。
左の足首が真っ赤に腫れあがって、病院で大げさにギプスを巻かれて全治2か月を言い渡される。
しばらくは自宅で事務作業に当たるしかない。
痛みをこらえて満身創痍で職場に戻って、編集長に「頭と手は無事なので在宅勤務にさせてください」と願い出た。
「それは助かるけど、そもそもその足で生活は大丈夫？一人暮らしで実家遠かったよね、確か」
心配そうな顔でそう言った後、編集長は来客を告げにきた同僚に呼ばれて行ってしまった。
歩くのは数歩ならできる。でも、長い距離歩くのは松葉杖だ。振動する度に痛む足首では、マンションの階段もキツイ。
買い物とかは多分ネットで何とかなるだろうし、外に出ないならワン ピースの部屋着でいても問題ないけど。
とりあえず今日の帰りはタクシーに決定。出費が痛いな。
色々考えて頭まで痛くなってきたところで、編集長が戻ってきた。ニコニコの編集長の後ろには、なんと。
ジャ「おう、大変やったな。オニイチャンが迎えに来たったで」
八重歯のジャッキー。
「何で？」
ジャ「ほれ、帰るぞ」
.
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作者名：きりん虫
| 作成日時：2020年7月6日 21時
