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安田のお祝いのために定時で帰っていく人たちを見送って、戸締りをして職場を出る頃には、外は暗くなっていた。
電車で二駅。
移動先のサテライト事業所は今の社屋よりも少し遠くなる。
就職してからずっと、毎日通ったこの通勤路ももうすぐ変わる。
感傷に浸ったままでカバンの中のマンションのドアの鍵を探していたら、後ろから抱きしめられた。
慣れ親しんだにおい、感触。
「あの、まだ外なんだけど」
安「――ごめん、限界」
入職して初めて会った時から、安田と私はすぐに仲良くなった。
安田は優しい。
裏に表に私の仕事をフォローしてくれたり、それとなく慰めてくれたり、無邪気にじゃれてきたりするのが、私も初めは嬉しかった。でも彼の横にいると、私の仕事はぬるま湯のような甘えた成果しか出さない。
それに加えて安田は職場の女の先輩にすこぶるモテていて、仲良くしていると裏で意地の悪いことを言われたりされたりした。
安田とじゃれあっていたら、私の仕事はうまくいかない。
それは私の青臭い醜態で、私の弱さで、彼には一ミリの非もない。
なのに私はそれを彼にぶつけて、そしたら彼は諦めたみたいに笑って言った。
安「そんなら、ルール決めよ」
密室、2人きり。
それ以外の所では、一切慣れ合わない。
会社では仕事の話以外はしない。
名前で呼び合うこともしない。
密室、2人きり。
それ以外の場所では、触れ合わない。
指を絡めることも
抱き合う事も。
安「A」
玄関のドアが閉まった途端に絡められる指に、強引に部屋の中へ促される。
「安田室長、祝ってもらうんじゃなかったの?」
安「用事思い出した、言うて抜けた」
抜けたって、主役なのに。
安「ご主人様にゴハン貰わなあかんから」
イタズラっぽく言った彼の声は、笑っていなかった。
そのまま寝室に連れて行かれる。
安「仕事頑張ったからご褒美くれるやろ?」
安「小さいって言うたこと、後悔させたるわ」
「しょうた、待って」
安「―――もっと呼んで」
ぎゅうっと、抱きしめられた耳元で、彼が小さく「いつまで我慢すればええの?」と呟いたのが聞こえた。
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めろんぱん(プロフ) - きりん虫さん» こちらこそ!!!!来年もどうぞ!よろしくお願いいたします!!!!胸キュン年納め、ありがとうございました!!!!!!涙 (2020年12月31日 9時) (レス) id: b5cc118e0b (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - ブルームーンさん» 年の瀬にふざけて終わったよ!ブルームーンさんもどうか良いお年を。そして来年もよろしくお願いします! (2020年12月31日 8時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - めろんぱんさん» 肉(笑)お歳暮という事でひとつご笑納下さい。来年もよろしくお願いします! (2020年12月31日 8時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - お疲れさまでした!毎回とっても楽しませて頂きました!良いお年を〜♪ (2020年12月31日 8時) (レス) id: a475b78d7e (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - すばりょーーーーーーーーーーー!!!!!って叫ぶだけのコメント残そうとしたらあとがきで死にました え、肉送ったらいいですか??? (2020年12月31日 7時) (レス) id: b5cc118e0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きりん虫 | 作成日時:2020年3月30日 6時