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───マしかし、人間頑張れば一晩でどうにかなるもので。夏休みのワークを泣きながら終わらせた始業式の朝。はたまた翌日提出の自由研究をほぼネットのコピペで終わらせたあの日。それと似たような感情に浸りながら、Aは個人的に可愛がってるミチコちゃん(情報部の子)と一緒に朝イチでとある店の前に立っていた。
「ミチコちゃんほんっっとにありがと、もう何でもする。何でも買ってあげちゃう。何が欲しい? 富? 地位? 名声?」
「海賊王みたいなこと言いなよぉ…ええとねぇ、先週出したメンテナンス、無理言って早めに上げてもらったからぁ。だから、今日の朝取りに来てって…言われてたんだけどぉ…」
「うんうん」
「あ、あう…出てこないねぇ」
ミチコちゃんは間延びした声で困ったように言って見せた。Aはこの様子を後に「天使が立ってるのかと思ったね」と語る。
話は戻って、実はこの店。ミチコちゃんの顔馴染みの爺さんがやっている店なのである。表向きは普通の工具店であるが、実は裏の人間からの注文も取り扱っている。マフィアからはかなり贔屓されている店である。腕も良いし、何より働いているのが爺さん一人なので、何か漏れたとしても犠牲が一人で済む。
そう考えるとなかなか物騒な話だ。
「うーん、まだ寝てるのかな?」
「そんなことないと…思うけどぉ…そんな人じゃないしぃ」
オドオド。キョロキョロ。closedと書かれた看板をもどかしそうに見つめること数分、突然店のシャッターがギャギャギャギャ!と錆び付いた音で勢いよく上がった。中から、額にシワの入った爺さんが鬼の形相で顔を出す。
「小娘ェ!」
「ゲ。怒り心頭」
「次もういっぺん同じこと頼んでみろ! お前の職場はなくなると思え!」
「マフィアこんなジイさんにナメられとる」
「返事!」
「ッス!! すみません! もう明日までに仕上げろなんて頼みません!」
「ヨシ! これ持ってとっとと帰れ! もう来んな!」
「アザス!! また来ます!」
「来るんじゃねェ!」
そしてまたギャギャギャギャ!と音を立ててシャッターが閉じる。一部始終を陰で見ていたミチコちゃんは、キレた爺さんにビビってしまって、雨に濡れた子犬のように震えていた。
「お、怒ってたぁ…」
「いや〜爺さん朝からこんな怒ってたらいつか血管切れて死んじゃうよ。よく言っといたげて」
「ぜ、全部Aちゃんの所為だよぉ〜」
ともかく、武器は間に合った。次だ。
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アボカドサラダ(プロフ) - 抹茶あいすさん» 嬉しいお言葉を沢山ありがとうございます! そうですよね、私も甘い対応が多いと思うのですが夢主はそう思ってないみたいです笑 これからもよろしくお願いいたします! (2022年7月25日 19時) (レス) id: cf05fdb6e7 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶あいす(プロフ) - そんな素振りなかった、みたいなこといってますけどだいぶ甘かった気がするのは僕の気のせいでしょうか?こういった話はあまり読まないのですが、文章が読みやすくて、面白く読ましてもらってます!!更新頑張って下さい!! (2022年7月25日 16時) (レス) @page45 id: f01e2a172c (このIDを非表示/違反報告)
アボカドサラダ(プロフ) - 白ちゃんさん» お読みくださりありがとうございます! (2022年7月21日 18時) (レス) id: cf05fdb6e7 (このIDを非表示/違反報告)
白ちゃん - 面白かったです。 (2022年7月21日 18時) (レス) @page41 id: 0a2f8cc4e7 (このIDを非表示/違反報告)
アボカドサラダ(プロフ) - ゆなんさん» 憧れだなんてありがとうございます! 夢主も喜んでいます。文章についてもお褒め頂き嬉しい限りです。マフィアは大変ですが実力さえあれば大量の金銀が手に入る世界ですからね^^ 頂いた言葉を胸に更新頑張ります! (2022年1月21日 8時) (レス) id: cf05fdb6e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アボカドサラダ | 作成日時:2021年9月18日 12時