【中原中也】美容オタクなので金がない【文スト】

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パーティーから2ヶ月。実の所、Aは例のヤクザ屋さんの息子殿とぼちぼち連絡を取り合う仲になっていた。



メッセージ 080-XXXX-XXXXそろそろお嬢さんの名前を教えていただけませんか? きっとあなたの様に、清らかで美しい名前なんだろうと思います

「歯の浮くような台詞だね」

「こんなのが毎日です」

「ふふふ、Aちゃん息子くんと順調に仲良しなんだって？ その調子でお父上の黒〜い噂の真否も確認してもらいたいものだがねぇ」

「無理言っちゃいけませんよ、毎日猛アタックされてるのを交わすだけで精一杯なんです」

「男の扱いには慣れてるんじゃなかったのかい」

「オジサン限定ですね。自分が年下の女の子に好意を向けられる程の良い男だって勘違いしてる中年のオジサンに限ります」

「手厳しいねぇ。中年の男が好きな女性も居ないことはないだろう」

「マァ、いるかもしれませんけど…大体お金目当てだと思います。だって私がそうですし」

「ハハ、なるほどね」



　珍しく遊んでいるエリスにちょっかいをかけずに、真剣な表情で手元の資料を眺める森。そのうちの何枚かをホチキスで留めると、ホラとAに渡した。そこに載っているのは、先ほど話題に昇ったヤクザ家の息子の情報である。ペラリと捲った2枚目にはその親、つまり現会長の情報が並んでいた。



「最近は大人しいから見ても面白くないけど、見ておけば何か使えるかもしれないからね。まあ面白くはないけど」

「面白くないんですね」



　ぺらと見ると、成程確かに、ここ十数年に目立った動きはない。会長が高齢だというのもあるが、暴対法が厳しくなったというのが大きな原因であろう。



「いや〜でも、大人しいなら良いことこの上ないと思いますけど」

「そうなんだがね。マ、表に出てる情報だけじゃ何とも…現に彼、麻薬の輸入をしているって噂が最近あってね」

「麻薬を……そりゃ国内でもかなり大きいパイプになるでしょうから、成功してれば小さい仕事なんてやらなくて済みそうですけどね」



　冷めた紅茶を啜って書類をパラパラ捲る。森が面白くないと言ったのは事実で、確かにAが読んでも目を見張るような内容は書いてない。
　ただ、何かが引っかかるのは気のせいか。それとも、麻薬を扱うという妙な噂のせいか。

　とは言えこちらも商売で、そういう時の嫌な予感は大体当たるものだ。意を決して、Aは「分かりました」と森の顔を見た。



「私に任せて下さい」

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