言葉の選択 ページ32
千鶴「メザクラに対する監視をさらに強めなさい、彼女は術をほぼ使えないも同然よ、体を拘束してしまえば捕縛は楽なハズ。 情報は更にださせなさい、腕でも足でも落として構わないわ。 何もしなくても百年くらい経てば生えて来るでしょうし」
何気に恐ろしい事をさらっと言う千鶴であるが悪魔の中で言えば別にどうって事は無かった。
それに、腕の一本や二本… 希に三本とか四本持つヤツも居るが見た目がキモイため出世できた試しがないが。無論足も同じである。
姿が人に似ている為に、常に変化に近い術を保ってなければならず、かなり高度な技術を擁する為に体の作りが明さまに人では無いと分かっている者は出世しにくい社会であった。
千鶴「あ、それと――― ファラ」
ファラ「はいはい、何ですかぁ？ 部下思いじゃない上司さん」
これは明さまに皮肉を言っている。
が、千鶴にとっては案外褒め言葉に近い。
千鶴「何処でそんないい褒め言葉覚えたかは知りませんが、引き続き情報引き出して下さいね」
ファラ「へいへい… って。 千鶴さま？ アンタにとってアタシは一体何者？」
悪魔にとって部下は何にでもなる。
捨て駒。 駒。と言うのが大体ではある。
が、この千鶴は今まで部下と言った下級悪魔を自分の支配下に置く事は無かった。
あったとすれば、お手製の“地獄蝶”ぐらいだ。 あの“黒”は美しいのだが、中々手に入らない作れない代物だ。
実際、かなり高貴な魂をつぎ込んだ悪魔もいるが、純粋な一転の曇りもない“黒”にはならなかった。
千鶴「私にとって貴方は使える駒。 何時かは私の仕事の全てを押し付けて成りあがって貰いたいですねぇ」
クスリと笑む千鶴。
褒め言葉か貶し言葉か、どちらかと言われれば貶し言葉と取る者が多いだろう。
しかし、ファラはそうとは思えなかった。 この辛口な上司は何があっても自分をほめる事など無かった。 嫌、滅多に無かったのだ。
嬉しかった――――。
これが、素直な感想だ。
どうしよう…
口元が緩んでニヤけてしまう……。
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作者名：王獣闘蛇 | 作成日時：2014年7月2日 19時
