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はちわ。 ページ8







「っ……あなたに」


小さく紡がれた言葉は、心做しか震えていた。


「あなたにっ……!!何が分かるっていうの!?」


その言葉と共に勢いよく上げられた顔は、苦しそうに歪んで、涙が溢れていた。


「辛いよねとか、分かったようなこと言わないで!!」


……そりゃそうだ。

私は何も知らないし、何も分からない。

私だって、今の問題に辛いよねなんて言われたら怒ってしまうかもしれない。


「……うん。確かに、私は何も分からない」


目線を下げて、自分の足元を見る。

じゃあッ……!と、苦しそうな声で何かを言おうとする彼女の言葉を遮る。


「でも!……でも、何も分からないけど、黙って傍にいることはできる。抱き締めてあげることは、私にだってできる」


伏せていた目線を上げて、彼女と視線を合わせる。

彼女は、驚いたように固まってる。

まずいこと言ったかな……と思った直後、彼女が再び泣き出した。

急に泣き出したので焦っていると、私に抱き着いてきた。

訳も分からないまま抱き締め返して、艶やかでサラサラな髪を撫でる。


「傍にいて、くれるのッ……?」


嗚咽が混じり聞き取りずらかったけれど、確かにそう聞こえた。

その言葉に一瞬驚いたが、静かに口を開く。


「それじゃ、足りないかなぁ?」


ぎゅうっと抱き締める力が強くなり、嗚咽のせいで発せられない言葉の代わりに、首を何回も横に振る。

小さな子供みたいに泣き続ける彼女の背中をただただ優しく撫で続ける。

これが、私にできる精一杯だから。





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←ななわ。



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霧雨-きりさめ-(プロフ) - キラリさん» 僕も好きですありがとうございます!!← 更新ペースとってものろまですけど応援されたので頑張ります(真顔)← コメントありがとうございました! (2019年3月28日 21時) (レス) id: 8bd0fccc40 (このIDを非表示/違反報告)
キラリ(プロフ) - 好きです!笑。頑張って下さい!応援してます! (2019年3月28日 1時) (レス) id: 203d4207d9 (このIDを非表示/違反報告)
霧雨-きりさめ-(プロフ) - まっちゃオレさん» ああああぁ……!神じゃないですけどありがとうございます!!更新ペースは遅いですけど頑張ります……! (2019年2月1日 22時) (レス) id: 8bd0fccc40 (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃオレ(プロフ) - 文才神!!更新頑張って下さい! (2019年2月1日 1時) (レス) id: 0ccaee81a8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:桜雨さん | 作成日時:2019年1月8日 1時

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