遠い記憶（ビーム）※男主 ページ21
どうしてこんなときに、あの時のことを思い出すのだろう。
自分の頭がゆっくりと宙に舞っていく。
いや、地面に落ちていくのか。
一瞬だった。
チェンソー様の胸のスターターを引いた瞬間、闇の悪魔に首を撥ねられた。
薄れゆく意識の中で、呆然とした顔でオレを見るAと目が合った。
ビーム！
Aが悲痛な声で叫ぶ。
キライなあいつは、いつもの薄ら笑いじゃなくて、今にも泣きそうな、情けない顔をしていた。
どうしてAがそんな顔をするんだろう。
考える間もなく、頭がごとりと地面に落ちる音を聞いた。
そしてオレはまた、あの時のことを思い出していた。
あのあと連れていかれたソフトクリーム屋が、すごく美味しかったこと。
欲張ってソフトクリームを2つも買ったAが、転んでソフトクリームを落っことしたこと。
地面に手をついて絶望するAを思い切り笑ってやったら、なぜかAも楽しそうに笑いだしたこと。
思えば、誰かとあんな風に何かを食べたのは、初めてのことだったかもしれない。
──ああ、オレ、あのとき、楽しかったんだ。
走馬灯のような記憶がフラッシュバックする。
チェンソー様のこと、昔のチェンソー様のこと、Aのこと。
チェンソー様でいっぱいの記憶の中に、たびたび、薄ら笑いをしたあいつの顔が交じっていた。
オレ、意外とAのこと嫌いじゃなかったのかも。
あいつ、面倒くさいヤツだけど。
『よく言われる』
いつかの記憶の中のAが、くすくす笑う。
それを最後に、オレの意識は深い闇の中へと落ちていった。
＊
無数の十字架が並んだ墓地の中を、男は歩いている。
ここには、公安を殉職した人々が眠っていた。
男は目当ての墓の前に着くと、墓標の前に花束をそっと手向けた。
悪魔が死ぬ事は無い。
たとえ死んで肺になったとしても、人がその名前に恐怖する限り、別の個体になって蘇る。
これは、天使の悪魔に教えてもらったことだった。
現世にも地獄にも、俺の相棒だったビームは、もうどこにもいない。
マキマさんに無理を言って作ってもらったこの墓標だけが、俺とビームを繋ぎ止めてくれる最後の拠り所だった。
｢ビームくん、俺さ｣
無理やり笑顔を作って、努めて明るく話しかける。
ビームの記憶に残っている、昔のままの、あの下手くそな笑い方で。
｢ビームくんのこと、結構好きだったよ｣
男の頬に、涙が一筋伝った。
＊
リクエスト：のっぺりこん様
続く
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ちえ - アキくんの夢もまだ少ないのでこれから楽しみに待ってます (2022年10月15日 23時) (
レス) id: 0560ab194e (このIDを非表示/違反報告)
ゆり - チェンソの夢はまだまだ少ないので嬉しいです！とても面白かったです！キャラクターの思考や話し方なんかがとても自然で楽しく違和感無く読めました。次回を楽しみにしています。差し支えなければ、マキマの夢が読みたいです。女夢主であればどんな話でも嬉しいです。 (2021年7月8日 0時) (レス) id: 979541037a (このIDを非表示/違反報告)
肩サラダ(プロフ) - チェンソーマン大好きなのでこういう短編集がすごく嬉しいです、、！最高です！！リクエストをお願いしたいのですが、ビームくんで女主のお話を書いて欲しいです！お時間ある時で構いませんのでよろしくお願いします！ (2021年2月11日 20時) (レス) id: dfa81ef2dc (このIDを非表示/違反報告)
切れ端(プロフ) - ドコサヘキサエン酸さん» コメントありがとうございます！もっと良いものが書けるように頑張りたいです；；本当そう思います！アニメ化がきっかけになって、もっと増えたらいいな…… (2021年1月10日 0時) (レス) id: f24ed74d9a (このIDを非表示/違反報告)
切れ端(プロフ) - あるみくさん» コメントありがとうございます！嬉しいです…！更新頑張ります！ (2021年1月10日 0時) (レス) id: f24ed74d9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：切れ端 | 作成日時：2020年4月20日 11時
