彼女には敵わない（デンジ） ページ13
午前7時。
いつものように三人で朝食を食べていると、パワーがふいに口を開いた。
｢デンジィ、Aとはもうキスしたのか？｣
朝食の場にはかなりふさわしくない質問に、コーヒーを飲んでいたアキが思い切り咳き込んだ。
最近、恋愛ドラマにはまってるパワーは、恋人であるAとのことについてよく質問をしてくる。
｢してねぇ。超してぇけど｣
ゲホゲホと咳き込むアキの背中を叩きながら答えてやると、パワーがあざけるように鼻を鳴らした。
｢ウヌらは遅れとるのぉ〜〜！！デンジ、女は積極的な肉食系男子に惹かれるもんじゃ！もっとグイグイいけ！｣
『肉食系』だの『女は肉食系男子に惹かれる』だのというのは、今見ている恋愛ドラマから得た知識だろう。質問のあと、パワーはこうして受け売りだらけのアドバイスをしてくるのが常だった。
｢あ〜？仕方ねぇだろ、付き合ったばっかだし。
あと、無理言って嫌われたくねぇし｣
｢そんなんじゃ、いつか他の男にAをとられてしまうぞ！ワシの見てるドラマではそうだった！｣
ぎくりとする。
そんなの、考えたこともなかった。
もしかしたら気づいていないだけで、デンジからAを奪ってやろう、なんてことを考えている輩もいるのかもしれない。
｢っは、はァ〜〜！？他の男って、例えば誰だよ！｣
ムキになって聞き返すと、途端にパワーの視線が泳ぎ出した。あんな風に担架を切ってはいたものの、そこまでは考えていなかったらしい。
そして、泳ぐ視線がアキを捕える。
｢あ〜〜〜……、チョンマゲ、とか？｣
｢……えっ、はあ！？とらねえよ！！｣
急に巻き込まれたアキが抗議するも、パワーの耳には届いていないようだった。
もうアキを名指しで略奪者呼ばわりしたことも忘れて、膝に乗せたニャーコを撫でまわしている。
｢ま、精々気をつけた方がいいの！｣
なぁ、ニャーコ！
パワーが呼びかけると、ニャーコがそれに応えるように、｢にゃあ！｣とひと鳴きする。
｢へーへー、ご忠告どーも｣
色々なジャムを塗ったくったトーストを齧りながら、先程のパワーの言葉を思い返す。
『そんなんじゃ、いつか他の男にAをとられてしまうぞ！』
とられる。取られる。盗られる。
心の中で繰り返すと、胸がザワつくような、モヤモヤするような嫌な感覚を覚えた。
……こいつの言うことなんて、気にするだけムダ！
自分にそう言い聞かせながら、デンジは口の中のトーストを飲み込んだ。
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ちえ - アキくんの夢もまだ少ないのでこれから楽しみに待ってます (2022年10月15日 23時) (
レス) id: 0560ab194e (このIDを非表示/違反報告)
ゆり - チェンソの夢はまだまだ少ないので嬉しいです！とても面白かったです！キャラクターの思考や話し方なんかがとても自然で楽しく違和感無く読めました。次回を楽しみにしています。差し支えなければ、マキマの夢が読みたいです。女夢主であればどんな話でも嬉しいです。 (2021年7月8日 0時) (レス) id: 979541037a (このIDを非表示/違反報告)
肩サラダ(プロフ) - チェンソーマン大好きなのでこういう短編集がすごく嬉しいです、、！最高です！！リクエストをお願いしたいのですが、ビームくんで女主のお話を書いて欲しいです！お時間ある時で構いませんのでよろしくお願いします！ (2021年2月11日 20時) (レス) id: dfa81ef2dc (このIDを非表示/違反報告)
切れ端(プロフ) - ドコサヘキサエン酸さん» コメントありがとうございます！もっと良いものが書けるように頑張りたいです；；本当そう思います！アニメ化がきっかけになって、もっと増えたらいいな…… (2021年1月10日 0時) (レス) id: f24ed74d9a (このIDを非表示/違反報告)
切れ端(プロフ) - あるみくさん» コメントありがとうございます！嬉しいです…！更新頑張ります！ (2021年1月10日 0時) (レス) id: f24ed74d9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：切れ端 | 作成日時：2020年4月20日 11時
