恥ずかしがり屋と呪言師 (ページ36)

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「棘先輩、はやいっ」と声を掛けるも止まる気配がなく、思わず「とげくんっ！！」と呼ぶとぴたりと動きが止まり、驚いたようにこちらを見つめていた

「怒ってる？」

私の答えとは反対に「“心配した”」と眉を八の字に下げ、涙を浮かべていた

「ごめんね、棘先輩」

「“３日”」

ぽつりと溢した言葉に首を傾げると「“Aが寝てた日にち”」と頬を撫でられ、くすぐったくて片目を閉じた

「そんな寝てたんだね」

「しゃけ」

肯定の言葉が返ってきたかと思うと怒濤のように次々言葉を紡がれた

「こんぶ、高菜、いくら、塩むすび！！」

凄まじいおにぎり語に思わず、圧倒されてしまう

「本当にごめんって、でもね思い出したんだよ」

負けじとこちらも眠ってたときに記憶を思い出したことを伝えるとおにぎり語もぴたりと止まった

「棘先輩だったんだね、私の記憶から先輩を忘れさせたの」

すると今度は申し訳なさそうに「明太子」と返ってきた

「私っ、本当にダメだなぁ……っ……前から先輩に迷惑かけて、助けてもらって、ばっかりだ……っ」

「おかか」

小さく否定する言葉が聞こえ優しくぎゅっと抱きしめられた

「“俺、Aちゃんに辛い思いさせたなくて、ずっと笑って欲しかったから
むしろ追い詰めるようなことしてごめんっ”」

やっぱりどこまでもやさしい

「ありがとう」

その言葉が届いたかはわからない

もともと回復しきれてない呪力を使ったからか、私の意識はそこで切れてしまった

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