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ページ30

疲労から言葉も自然と少なくなるが、「また行きたいね」「ツナ」と笑みは絶えなかった

「お月さま綺麗ね」

少女が指差すと目の前には丸々とした綺麗な月が昇り始めていた

「今度はお月さま見に行きたいね」

「めんたいこ」

嬉しそうに小指を差し出され、自分の小指を器用に絡ませ「ゆーびきりげんまん」と歌い始めた時だった

「“こ゛ち゛そ゛う゛ーーーーー”」と大きな声が聞こえ、上を見ると呪霊が口を開け厭らしい笑みを浮かべていた

今まで見守っていた私もはっと我に返り、指で印を結び、呪術を出そうにも夢だからなのだろう何も出ることがなかった

小さな私もやってみようとするも、指がまだまだ小さく上手く結ぶことが出来ない

「動くな」

「ぶっとべ!」

小さな私の手を握り、走りながら呪言を使うもまだ子どもで限界なんてたかが知れていた

「“式神 瑠璃清瀧”!!!」

胸元から呪符を出し、呪力を吹き込むと大きな龍を出すのがいっぱいいっぱいで大量の水が溢れ、棘先輩の家の前までたどり着いた

「呪霊が!」

中にいた大人たちが慌ただしく外へと這い出すのが見えた

「どうしてこんなところに」

「まさか」とこちらに向く目線が怖いのか棘先輩にぎゅっと抱きついた

「そんなこと話してる場合ではないですよ」

悠長に話しているが、雰囲気はどこかピリッとしていた

「おばあちゃまっ」

「良く頑張ったねぇ
式神もずいぶん上手になってるよ」

ふわりと微笑み、水の痕跡を優しくなで、「“瑠璃清瀧”まだやれるね?」そう問いかけると立派な清瀧が現れ、大きく口を開き、呪霊を飲み込むとそのままどこかに姿を消し去った

でも、それからの流れはとても難しい話となった
棘くんと繋いでた手は、大人たちによって引き離されて、荷物をまとめて家に戻されてしまった

おばあちゃまのとても悲しそうな顔も、棘くんの驚いた顔も忘れられない

何が起こったのか分からなくて、おばあちゃまも「ごめんね、A」しか言わない
棘くんの名前を出してはダメな気がして、聞くことが出来ないまま長い月日が流れた


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作者名:ゆきはな | 作成日時:2021年4月27日 22時

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