６話 ページ12
「A」
誰？優しく名前を呼んでるの？
前に聞いた声に似てる
切なく「忘れて」って誰かに言われた声に……
何か忘れていそうな記憶を思い出そうとしたところでふっと目が覚めた
ツンとする独特な薬品の匂い
起き上がってみようとしたが、力が入らず身体が動かない
そうだ、久しぶりに紅蓮呼び出して呪力使いきったんだっけ？
「あっ、先輩は？」
と声に出したときには誰かに抱きおこされて、腕の中に入ってしまっていた
「えっ？あ……」
チラッと見えた横顔、優しい香り
「狗巻……せんぱい？」
「高菜ぁ、明太子」
そう言った先輩の目には涙が浮かび余程心配させてしまったようだ
「心配かけて、ごめんなさい、狗巻先輩は怪我なかったですか？」
「しゃけ！」
私から離れてピースして見せてくれる先輩はどこか可愛い一面があるんだと分かった
「あんまり、無理しないで」
スマホに打ち込まれた文字を見て、小さく頷いた
「助けてくれてありがとう」
「狗巻先輩こそ、助けてくれてありがとうございました」
ぺこりと頭をさげると「ツナ、おかか」と制され頭をあげるとファスナーを開け、口パクで何かを伝えている狗巻先輩
「ん？え？……と…げ…？」
「しゃけ！」
「名前で呼んでほしいってことですか？え？でも」
と口ごもればスマホをずいと目の前に押し付けられた
“恵も悠仁も名前なのに俺だけ名字じゃん
俺も名前で呼んで”
「おかか？」
可愛いらしくこてんと首を傾げる先輩……あざとい。ズルい……そしたら、「棘先輩」って呼ぶしかないじゃん
「棘先輩」
「しゃーけ！」
満面の笑みを浮かべ、ぎゅーと抱き締めてくれる先輩のあたたかさに思わず目を閉じた
ちょうどよく、医務室の中を暖かい春の風が通りすぎて行った
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
少しドキドキしたり、胸が暖かくなったりする気持ちに気づくのはもう少し
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 252人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆきはな | 作成日時：2021年4月27日 22時
