[刀剣乱舞]農具ですが、神様やっています (ページ13)

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5話ページ13

A

僕が生まれたのは名前のないような小さな村でした。

その村の唯一の刀鍛冶一家で、僕は"農具"ではなく"薙刀"として作られました。

自分で言うのもあれですけど、それはそれは美しくて切れ味も良く、とても大切にされていました。

そして薙刀の僕は風の噂で少し有名になり、色んな人が僕を見に来るようになりました。

僕が有名になると同時に刀鍛冶一家も少しずつ有名になっていきました。

刀鍛冶一家はとても喜んで嬉しそうに毎日笑っていて僕は幸せでした。

そんなある日、僕は刀鍛冶一家の当主のお父様に連れられ村を管理しているお偉い方に会いに行くことになりました。

なんでも、一目見てみたいと頼まれたそうでお父様もいつもより少しいい格好をして行きました。

僕を見たお偉い方は、とても目を輝かせて何度も「素晴らしい」と言ってくださりました。

そしてお父様は少し良いお土産を家族のために買って家に帰りました。

家には笑顔で「おかえり」と言ってくれるお母様にお兄様、弟様がいらっしゃる....

はずでした。

家に入るとそこは血の海でした。

家の中は荒らされ、３つの体が倒れていた。

お父様は膝から崩れ落ち震えていた。

「...と...う...さん...」

消えそうな弱々しい声。

その主は腹を刺され、仰向けに倒れていた弟様でした。

「しっかりしろ！！大丈夫だ、すぐ医者を」

「とうさん...盗賊が....その、その薙刀を...狙って.....」

「ダメだ、ダメだ！しゃべるんじゃない！」

「...薙刀...見たい...な」

「あぁ、見せてやるから！しっかりしてくれ！！」

「...名前...決めてなかったね...」

弟様が僕を血のついた手でそっと撫でた。

「とっても...キレイだもんね....そうだなぁ....月、月だ。」

弟様の手を握り締めたかったが、当時の僕はただの薙刀。

「...そう、月って言えば...お前は月の光でとってもキレイに...輝いていたよな」

お父様は涙を流しながら、弟様の話を聞いている。

だんだん、弟様の体温が下がっていく。

「...そうだ、いい名前を考えた...
とうさん、俺が付けていい...？」

「...っもちろんだ」

「げっか...こう....
月下光...A...だ」

そう言った途端、弟様の手はパタリと落ちた。

家には、お父様の叫び声が響いた。