41 追憶/ 仕組みと馬鹿 ページ41
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今週末となると、あと3日しかないことに気づいた。
陣くんから渡された書類には土曜日の文字。こんな急に、もっと早く言ってくれれば、という文句も頭に過ぎるがそれどころではない。
もう既にAがライブをやるという噂は広まり、昼休みには教室にまで先輩たちが押しかけるという迷惑行為に悩まされた。
スバルは「いいなあ」なんて気伸びしたことを言っていたが、Aにとってはそんな嬉しい物ではない。いやステージに立つことは嬉しいけれど、それよりもプレッシャーが勝ってしまっている。( …上手く、できるかな )
「ううん!上手くやらなきゃ…やるしかないんだから」
社長さんが期待してくれるのはAを信じてくれてるから。
施設という芸能界からかけ離れた場所からAを見つけてくれた人に、ガッカリさせたくない。
もうすぐレッスン室に到着する、と言った所でカバンから鍵を取り出していると、ドンッと何かにぶつかった。「わ、」「おっ…と」声が聞こえるからするに、どうやら人のようだ。
Aは急いで頭を下げる。
「ゴ、ゴメンナサイ!余所見してて…」
「ああ、僕の方こそ…」
「…?」
「…驚いたな、まさか君だったなんて。“テスター”の、右京Aちゃん」
白い。
Aとは真反対の髪色、身長。
蒼い瞳は吸い込まれるくらい綺麗だった。
「存在こそは知っていたけれど、こうして見ると可愛らしい子なんだね。ぶつかっちゃってごめんね、怪我はない?」
「あ…全然。…あなたの方こそ、具合悪そうだよ」
「…」
白いのは容姿だけのことではなく、顔色も悪そうに見える。白い肌は健康そうには見えないし、目の下にはクマがあるようにも見えた。
「陣くん呼ぶ?」
「…あはは、陣くんって、もしかして佐賀美先生のことかな? ん、大丈夫だよ。…それより、今週末にライブをやるんだってね。噂で耳にしたよ」
「あ、そうなの!今からレッスン室に行って練習するつもり」
「へえ…偉いね。って言うのも失礼か、楽しみにしているよ。頑張ってね」
じゃあ、と微笑んで、名前も知らない彼は歩いて行った。
その背中は細くて弱々しいもので。
( なんか社長さんと似てるような、似てないような…?)
「英智? どこをほっつき歩いていたんだ、探したぞ」
「確認をしに行ってただけだよ。…でもダメそうだ」
「?」
「彼女じゃ“役”にもならない」
お姫様は必要ないかもね。
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かげやま(プロフ) - みそらーさん» こんにちは!コメントありがとうございます!新作です〜🥳こちらこそ楽しんでもらえるようにがんばります✊ (2022年4月2日 15時) (レス) id: d06e41bbdd (このIDを非表示/違反報告)
みそらー(プロフ) - し、新作ですか…!楽しみです。自分のペースで、応援してます!! (2022年4月2日 15時) (レス) id: 6e5a03b04b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かげやま | 作成日時:2022年4月2日 0時