16 追憶/ 始動 ページ16
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最後、ギターの音で曲が締まると、わああ!と歓声が上がった。マイクを握って膝に手をついていたAは驚いて顔を上げる。
そこには不良たちの他に別の夢ノ咲の生徒がいたり、私服のお客さんもいたり。いつの間にか人が増えていたみたいだ。
うおー!などという雄叫びがなったり、「ファンになったぞー!」とヤジが飛んだり。しかしヤジだと思っているのはAだけで、この場所にいる人たちを魅了させたのは紛れもない事実だった。そのことに気づくこともなく。
( あ、そうだ、事務所の人に言われてたんだった )
出来る限りファンを多くしなさい、とマネージャーになった人に言われたのを思い出した。出だしのファンほどついてくる人はいないからって。
「聴いてくれてありがとう!…えっと、私のこと応援してくれるとうれしいです」
そう会釈をして、ステージを降りた。
その際ハイタッチをされたり声をかけられたりしたが、珍しく応える気になった。
鞄の置いてあるところに戻れば、薫くんがドリンクを手にして「お疲れ様」と笑いかけてくれる。
「これ差し入れ!かっこよかったよ」
「あ、ありがとう…!かっこいいって言われるのがいちばんうれしい」
「俺はいつでも女の子を喜ばせる言葉しか言わないよ」
「ほんとだ、すごいね!」
「……や、今のはツッコむところね」
薫くんがくれたのはりんごジュース。
普段ジュースばっかり飲んでるAの大好物でもあった。
( すごいなぁ、私の好きな物まで持って来てくれるなんて )
いや、たまたま?
「うーん…ピュアすぎて難しいなぁ」
「なに?」
「Aちゃんがいい子だって話。…ね、Aちゃんがよかったらなんだけど、またここでやってくれないかな?」
「え!いいの?」
「盛り上がるに越したことはないしね!俺もAちゃんの歌好きになっちゃったから、今日で終わりなんてもったいない気がして」
「っありがとう!薫くん!」
また1からスタジオを探す必要がなくなって、Aは助かる思いだ。
「…私、もっともっと頑張らないと」
「アイドルになるから?」
「そう!事務所の人たちに恩返しできるように、と、あと……」
あとひとつ。Aがアイドルになった理由。
それは人に言うものじゃないから、Aは口を噤んだ。
そしてAはこれからの人生が大きく左右する出会いをする。
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かげやま(プロフ) - みそらーさん» こんにちは!コメントありがとうございます!新作です〜🥳こちらこそ楽しんでもらえるようにがんばります✊ (2022年4月2日 15時) (レス) id: d06e41bbdd (このIDを非表示/違反報告)
みそらー(プロフ) - し、新作ですか…!楽しみです。自分のペースで、応援してます!! (2022年4月2日 15時) (レス) id: 6e5a03b04b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かげやま | 作成日時:2022年4月2日 0時