78. 失恋 ページ28
.
.
.
今日は朝からいろんな人におめでとう、と祝福された。
ドラマ撮影が最終話へと進み、今日の分は撮り終わったところだった。スタッフ、スタイリスト、プロデューサーまで。「仲直りしたんだってね」なんて、恥ずかしすぎるだろう。自分たちの喧嘩を日本中の人に見守られていたみたいな、いや喧嘩ではないけれど。
今日はもう人に会いたくないな、と控え室に向かっていると廊下にスーツを着たあんずの姿があった。
「橙条くん、お疲れ様」
「あんず！」
「撮影見てたよ」
「え、なんでなんで」
ニコニコと笑うあんずに、Aはまるでしっぽを振っているのかと錯覚するほどはしゃいでいた。
「たまたまここで打ち合わせがあったんだ」
「そっか〜、あ！なら一緒に帰ろ。家まで送ってくよ」
「ううん、撮られたりしたら危ないから…」
「変装するから平気！夕方だとしても女の子を1人で帰す方がかっこ悪いよ。…それに、話したいことがあるんだ」
「……じゃあお願いしようかな」
「よっし！」
ロビーで待ってるように伝えて、Aは急いで私服に着替えサングラスと帽子を身につけた。
これが案外バレない。
「お待たせ」急いで向かうと、あんずは笑いながらAの襟を触った。
「襟中に入っちゃってるよ。…行こっか」
「ありがと」
タクシーなんて乗るほどお金を持っていないから電車と歩きで帰る。駅までは学校で話すみたいにくだらない話や仕事の話、電車の中では人の目を気にして何も話さなかった。
( …楽しいな〜。こうやって何も話さない時間も楽しい、)
目を伏せて、Aは眉を下げた。
彼女に言わなくちゃいけないことがある。
きっとそれを聞いて困るのは、この子だ。
「…Aくん? 大丈夫?」
「ん〜…?」
電車を降りる頃にはもう日は落ちていて、やっぱり送って行って正解だなと思った。
あんずが心配そうにAの顔を覗き込むからAは笑って、「名前呼びやっぱりいいね」と茶化す。
「懐かしいな。覚えてる? 初めて会った時」
「もちろん！衝撃だったもん、Aくんの歌すっごい上手だったから」
「えへへ…俺ね、最初あんずのこと好きじゃなかったんだ」
「そ、そうだったの…?」
「んーと、そんなハッキリしてなかったんだけど、スバルたちと仲良くしてたからさ、そういう人だと思ってた」
「……」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 709人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かげやま(プロフ) - 鈴花さん» コメントありがとうございます✨️私もまたこの2人書きたいなと思ってるので機会があれば…！臨時ユニットのお話も😂 (2月20日 23時) (
レス) @page49 id: 2b4670edb1 (このIDを非表示/違反報告)
鈴花(プロフ) - 一気読みしました！超最高でした！まだまだこの2人の不仲話も仲良し話も読みたすぎる…！あと臨時ユニの話を読みたい！ (2月7日 14時) (レス) @page1 id: cfaa8deb10 (このIDを非表示/違反報告)
かげやま(プロフ) - 俎板さん» コメントありがとうございます✊無事完結出来ました…！読んでくださりありがとうございました！嬉しすぎるお言葉〜😭🙏次の作品もよかったら…！ (2022年3月26日 2時) (レス) id: d06e41bbdd (このIDを非表示/違反報告)
俎板(プロフ) - 完結おめでとうございます…！作者さんのお話大好きです〜！ (2022年3月26日 1時) (レス) @page49 id: 0b4ff99b4b (このIDを非表示/違反報告)
かげやま(プロフ) - 彼岸桜＋αさん» こんばんは！コメントありがとうございます〜…！😖以前いただいたコメントで勇気づけられながら完結へ行けることが出来ました！本当に感謝しています😭最後まで読んでくださりありがとうございました！ (2022年3月25日 21時) (レス) id: d06e41bbdd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かげやま
| 作成日時：2021年7月3日 0時
