8 弱い八方美人 ページ8
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後ろから、痛いほどの視線を感じる。
Aはその正体と理由が分かっていた。
それでも英智のことがあってか意地でも自分から振り向きたくないと、無視を決め込む。
すると、相手が痺れを切らして話しかけてきた。
「ハクジン先輩!」
「……スバル」
あの明星の息子。
そんな差別用語をAは心の中で言った。
だが本当はAもAで、そんな彼が好きなのだ。
屈託もなく笑うその顔が。苗字が嫌いだと伝えたら、あだ名をつけてくれたスバルが。
「…観てた?」
「……観た。俺は英智が勝つと思ってた」
「うん、」
「おめでとう、スバル」
決してAは英智の仲間ではない。
英智を信じてはいるけれど、あのやり方は自分の成績をキープするために使っていただけだ。好きではない。
だからスバルを責めることは出来なかった。
「ハクジン先輩、笑ってよ。綺麗な顔が台無し」
「何でだよ。笑っただろ」
「俺はそっちの笑顔が見たいんじゃないんだよ〜」
むすぅと頬を膨らますスバルに微笑みかける。
スバルはそんなAを見てさらに頬を膨らませた。
今Aは戸惑って戸惑って仕方なかった。けど英智を倒した本人と話すことでそれが落ち着いている。
そんな自分に笑うしか無かった。
___ どっちの味方とか、どうでもいい。
正義のヒーローだった自分はもういない。
どちらかというと悪党なのだから、八方美人でいた方が自分には似合う。
……弱いのだから。
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かげやま(プロフ) - あこ 千秋推しさん» コメントありがとうございます。まさか千秋推しさんに読んでいただけるとは…!お褒めの言葉嬉しいです(^^) (2020年5月8日 4時) (レス) id: 1cd1d05918 (このIDを非表示/違反報告)
あこ 千秋推し - 手短に一言だけ。神です。 (2020年5月3日 21時) (レス) id: 93d2604178 (このIDを非表示/違反報告)
かげやま(プロフ) - せんり@お絵描き部所属@流星隊pさん» ダメージ喰らいました。ありがとうございます!!(^^) (2019年4月4日 19時) (レス) id: 1cd1d05918 (このIDを非表示/違反報告)
せんり@お絵描き部所属@流星隊p(プロフ) - 好きです(突然の告白) (2019年4月4日 12時) (レス) id: 6097f66ba7 (このIDを非表示/違反報告)
かげやま(プロフ) - 永瀬まゆさん» コメントありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しい言葉です(;;) (2019年1月19日 20時) (レス) id: 1cd1d05918 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かげやま | 作成日時:2018年12月25日 0時